学会|2025年12月8日掲載
「臨学一体の歩みから多職種連携での進化」をテーマに
日本スポーツ歯科医学会、第36回総会・学術大会を開催
さる12月6日、7日の2日間、埼玉会館(埼玉県)において、日本スポーツ歯科医学会第36回総会・学術大会(上野俊明大会長、安井利一理事長)が開催された。2日間で、特別講演、教育講演、海外招待講演、一般口演、シンポジウム、スポンサードセミナー、市民公開講座など多彩なプログラムが展開された。
1日目の開会式では上野氏(明海大学歯学部社会健康科学講座スポーツ歯学分野教授)による大会長挨拶、安井氏による理事長挨拶に続き、桑原 栄氏(埼玉県歯科医師会会長)による挨拶が行われた。
続いて、近藤剛史氏(大分県開業)の座長のもと、特別講演「ボクシング人生を振り返って~世界三階級制覇への挑戦~」と題して長谷川穂積氏(元プロボクサー)が登壇した。自身の生い立ちから三階級制覇までを語りつつ、プロボクサーが求めるマウスピースの条件として「安全性や打たれ強さより、食いしばったときに力が出るもの」と熱く説明した。
スポンサードセミナー1「アスリートから学ぶ共生・協調のスポーツ歯学」(株式会社ヨシダ提供)では、西野 宏氏(広島県開業)の座長のもと、鈴木浩司氏(日本大学松戸歯学部顎口腔機能補綴学講座准教授)が登壇した。アスリートにマウスガード(MG)を製作する際、これまでは軟らかいものが多かったが、固定された硬いMGの優位性を説明し、選手へ(1)硬いMGのメリット、(2)顎の動き、(3)睡眠・呼吸の状態などの情報提供を行うとした。また、将来的には栄養やドーピングの情報提供もあわせて行っていきたいとした。そして、先日のデフリンピックの会場にて、空手選手に90個のマウスガードを製作した様子を紹介し、アスリートのMG装着の重要性を訴えた。
2日目のシンポジウム「ポーツ医・科学サポート研究の最前線」では、岡田芳幸氏(広島大学病院障害者歯科教授)、月村直樹氏(日本歯科大学附属病院総合診療科4教授)の座長のもと、 川上泰雄氏(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)、増田裕也氏(帝京大学スポーツ医科学センター先端野球研究講座教授)、濵野 純氏(管理栄養士、国立スポーツ科学センター契約研究員)、森谷直樹氏(文化学園大学准教授)が登壇した。なかでも濱野氏は、一般人より高いアスリートのう蝕率(約40~50%)に言及し、トレーニングによる唾液量の減少、イオン飲料や補食などの影響を指摘した。これを改善するために、ジュニア期から歯科と管理栄養士が連携して指導していく必要があるとした。
スポンサードセミナー2/市民公開講座「スポーツと歯の力:元日本代表と考えるパフォーマンスと健康」(株式会社ヨシダ提供)では、坪井慶介氏(元プロサッカー選手)と山中一剛氏(株式会社ヨシダ代表取締役社長)が登壇した。坪井氏は、サッカーの試合中に相手選手の歯が自身の脛に当たり負傷した経験を語り、MGを装着していれば防げたとの意見を述べた。また、口腔ケアを定期的に行っているサッカー選手は少なく、自身も奥歯が破折した経験があるため、メインテナンスの重要性にも言及した。