社会|2025年12月22日掲載

「矯正治療における長期安定について考える」をテーマに

矯正歯科長期安定研究会(LTSOA)第3回学術大会開催

矯正歯科長期安定研究会(LTSOA)第3回学術大会開催

 さる12月20日(日)、アキバプラザ(東京都)において、矯正歯科長期安定研究会(LTSOA)第3回学術大会(橋場千織大会長、須田直人会長)が開催され、約200名が参集した。

 矯正歯科治療の長期安定を究極の目標とする本研究会では、治療終了後・保定開始から長期にわたり経過観察を行った症例を保定5~10年、保定10~20年、保定20年以上の3区分にわけて症例展示し、投票にて優秀発表賞を決定している。今回は昨年の受賞者である高柳譲司氏(東京都開業/保定5~10年「著しいoverjet, overbiteを伴う狭窄歯列のAngle II級low angle症例」)、立花京子氏(兵庫県開業/保定10~20年「Alexander disciplineの原則に基づく成人反対咬合の長期安定症例」)、浅井保彦氏(岐阜県開業/保定20年以上「AngleⅠ級叢生、非抜歯症例、治療後39年経過」)が登壇し、受賞症例について、行った治療およびその論拠、保定後の経過を詳解する優秀発表賞記念講演が行われた。治療を受けた患者が加齢していく様子も示され、8020運動と矯正歯科治療の関連、および今後目指すようになるかもしれない10024あるいは10028(100歳で24本、あるいは28本の歯を残す)と矯正歯科の貢献の可能性についてもふれられた。

 また教育講演「成長期の口腔機能発達と歯列形態の形成―矯正歯科治療の長期的安定を支える基盤として―」では根岸慎一氏(日本大学松戸歯学部)が登壇し、大学の近隣小中学校に通う児童らを対象に行った疫学的コホート研究から、口腔内形態の変化と機能発達の関連性や咀嚼機能や咬合力がどのように発達・強化されていくか、食物のテクスチャや凝集性と最大咬合力の関連について得られた結果について解説した。

 さらに会員講演では犬束信一氏(愛知県開業)が「矯正歯科―先天性疾患に於ける術後長期安定を考察する―機能の獲得と形態的安定」、布川隆三氏(大阪府開業)が「長期安定症例を通して検証する保定を見据えた生理的咬合を目指す矯正治療」、菅原準二氏(宮城県開業)が「長期安定性と矯正治療の論理的ステップ―私が日常臨床で心がけていること」と題して登壇し、それぞれ指定難病を有する小児患者との長期にわたって取り組まれた信頼関係の構築および治療、長期安定症例7例から見えてくる保定後安定が得られる要素の分析、治療技術の発展とともに変わってきた治療ゴール設定および治療・保定プロトコールについて解説がなされた。

 最後に今回展示された長期症例の優秀発表賞が発表され、盛会のうちに閉会された。次回はきたる2026年12月20日(日)に開催予定。

関連する特集