社会|2026年3月24日掲載
パノラマ診断の本質と臨床応用をさらに深堀りした1日
『パノラマ診断 パーフェクトガイド』出版記念講演会が開催
さる3月22日(日)、JRゲートタワーカンファレンス(愛知県)において、相宮秀俊氏(愛知県開業)による書籍『パノラマ診断パーフェクトガイド』の出版を記念した講演会(名古屋咬合臨床研究会主催、平岩裕一郎会長)が開催された。
これは、今年2月に刊行された『パノラマ診断 パーフェクトガイド』(相宮秀俊・著、クインテッセンス出版刊)の出版を記念して開催されたもので、連休最終日にもかかわらず多くの参加者を集めた。本講演では、パノラマエックス線写真を軸とした診断の考え方と、その臨床応用について、書籍の内容に加えてそれらをより深堀りした解説が行われた。
冒頭では、日常臨床で頻用されるパノラマエックス線写真がもつ潜在的な情報量に対し、十分に活用されていない現状が指摘された。そのうえで、本書はそのギャップを埋める1冊として企画されたものであることが説明された。続いて、パノラマエックス線写真が診断の出発点としてきわめて重要であることが強調された。口腔内全体を1枚で俯瞰できるという特性から、骨格や歯列、顎関節、上顎洞などを包括的に把握することが可能であり、相宮氏からは「すべての治療の交差点」として位置づけられるとの説明があった。
また、不足する情報についてはデンタルエックス線写真やCBCTによって補完することで、診断精度を高めていく必要性が示され、パノラマエックス線写真の撮影原理に基づいた読影の重要性についても詳細に解説。装置の回転による断層撮影という特性から、像の鮮鋭度や重なりは被写体の位置に依存する。これらを理解することで、歯の位置関係や異常の有無をより正確に読み取ることが可能となるとした。
さらに、正常像への理解とその重要性が繰り返し述べられた。病的所見の診断は正常構造との差異として捉えられるため、解剖学的構造の正確な把握が不可欠である。読影においては、全体を俯瞰する視点と局所を詳細に観察する視点を行き来しながら評価することが推奨された。
撮影時の基本手技についても言及があり、患者のポジショニングや咬合位の設定などが画像の質に大きく影響することが示された。また、ジグの使用の有無によって得られる情報が異なるため、診査目的に応じた適切な選択が求められるとした。
臨床応用の面では、パノラマエックス線写真単独での判断に依存するのではなく、デンタルエックス線写真やCBCTを組み合わせた多角的な診断の重要性が示された。とくに隣接面の評価やインプラント治療においては、撮影原理に由来する像の歪みや重なりを考慮した慎重な判断が必要である。加えて、診断から治療、さらに経過観察に至るまでを「ストーリー」として捉える視点の重要性も提示された。治療前にリスクや予測される経過を共有することで、患者との信頼関係を構築し、トラブルの回避につながると強調した。
講演の最後には、スタディーグループにおける症例検討やディスカッションの意義についてもふれられた。診断基準を共有し、チームとして同一の方向性で臨床に取り組むことが、診断力向上と医療の質の向上につながるとまとめられた。また、質疑応答も行われ、パノラマエックス線写真の撮影間隔やバイトブロックの必要性、前歯部の断層域についてなど、さまざまな質問が飛び交った。
本講演は、日常診療で最も身近な検査であるパノラマエックス線写真の価値を再認識するとともに、その読影と活用を臨床へと結びつけるための具体的指針を提示する機会となった。