2026年5月号掲載
日常診療の質を確実に高める1冊
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※本記事は、「新聞クイント 2026年5月号」より抜粋して掲載。
2026年3月に刊行された、『TISSUES 歯周・インプラント外科の硬・軟組織マネジメント成功の鍵』。本欄では、荒井昌海氏(東京都開業)に本書の特徴や読みどころ、活用法などについて語っていただきました。
(編集部)
『TISSUES』は、書籍にしかできないことを完遂している
デジタルの時代となり、紙の雑誌や新聞、書籍が売れなくなってきていると聞くことがある。確かに、私自身も雑誌や小説を読むことが減った。かといってデジタル上で小説を読むのではなく、今では歩いたりジョギングしたりしながら専用アプリで聞くようになった。ラジオや古典落語のように、音声から情報を得て、創造力をもって楽しむのならばそれでも十分だろう。簡単な情報収取や余暇の過ごし方としてなら最適な方法と考えている。
しかし、複数回にわたる刷り込み学習や、視覚に訴えて学ぶような場合、音声だけでどのくらいのことができるだろうか。ロープの結び方を音声で説明されて、それを正しく実践できる人が何人いるだろうか? 私は、書籍には書籍にしかできないこと、動画には動画にしかできないことがあると確信している。『TISSUES』はまさにその書籍にしかできないことを完遂している1冊といえる。そして本書がどのような書籍なのかと聞かれたら、この1冊で歯周組織や治療に関するあらゆることをまとめ上げた、究極の「歴史書・辞典(エビデンス集)・総合カタログ・芸術写真集・症例写真集」であるといえる。
本書のレビューをする前に、まず著者について紹介したい。Gustavo Avila Ortiz氏はスペインのマドリードで開業している歯科医師で、米国のミシガン大学やアイオワ大学で歯周病学講座の主任教授を務めていた実績がある。査読付き国際誌に100本以上の論文を発表し、現在もハーバード大学の客員教授をしながら米国歯周病学会の学会誌の副編集長をしている。もう一人の著者であるLeandro Chambrone氏は、ポルトガルやコロンビアの大学で、また、米国のアイオワ大学やペンシルバニア大学で教鞭を執る歯周病専門医であり、彼も論文を150本以上発表しながら多くの学会誌において編集者を務めている。
そんな彼らが執筆したこの1冊は文献の引用数がたいへん多く、すべての章の文献の引用数を数えたところ、なんと1,224本もの論文が引用されていた。この数からだけでも、本書が歴史書であり、辞典であると述べた理由がご理解いただけると思う。
ページ配分から伝わる著者らの想い
私が書籍を読むときに大事にしていることは、著者による前書き(序文)と目次である。著者がどのような気持ちでこの書籍を書いたか、そして何についてまとめたかったかが良くわかるので、この部分にはその書籍の重要な部分が集積されているといっても過言ではない。逆にこの部分を飛ばして読むと、どんな書籍でも面白さが減ってしまうと考えている。
あらためて目次を紹介したい。本書は全部で5章で構成されており、1章「組織」(114頁)、2章「器具」(60頁)、3章「フラップ」(40頁)、4章「移植」(110頁)、5章「外科手術」(270頁)となっている。このページ配分からも著者の想いが伝わってくる。バイオロジーを大事にし、器具や材料にこだわり、初学者のためにフラップの切開・剥離・縫合をまとめ、そのうえで軟組織移植や硬組織移植のメカニズムについてまとめ、最終章の外科手術では網羅的に、余すことなく美しい症例を60症例も供覧している。
まず1章では、「組織」に対する徹底したバイオロジーについて記載している。あらゆる文献をベースに、組織標本の写真、偏光下写真やSEM像を紹介し、用語や分類の定義やその時代背景による遷移などをまとめている。たとえば、歯周治療において「バイオタイプ」といわずに「フェノタイプ」というようになった経緯や正確な用語の使い方についても細かく言及されている。このことからも、本書は初学者に限らず、あらゆるエキスパートにも辞典として活用していただける。
とにかく一度手に取ってほしい。本当に美しい組織標本や写真が掲載されている。内容がわかる人でも、またわからない人でも、その芸術的な写真を見ているだけで価値があると思える章になっている。
続く2章の「器具」では、私自身、あらためて勉強になった部分が多い。骨膜剥離子を例にとっても、アレン、ブーザー、プリチャードをどのように使い分けるか、また、鉗子(ピンセット)や剪刃、持針器の種類と使い分けについて深く学習することができる。さらには、メス刃や針糸、ボーンタックまでを、1ページ丸々使った拡大写真で見ることができたのは、とても興味深い。ちなみにルーペの種類やその構造、マイクロの使い方に対する考察まで述べられているのも興味深かった。
そして著者がその考察のなかで「拡大視野装置は、手先の不器用さや知識の欠如を補う手段として、または単なるマーケティングツールとして導入されるべきではない」と述べている。私もこれに激しく同意する。皆さんも読んでみて、どう考えるかぜひ教えてもらいたい。
3章では、「フラップ」の切開・縫合・剥離について原則的なことがまとめられている。初学者はまずはここから学んでほしい。切開線の入れ方、剥離の注意点、各種縫合方法の意図と手技について記載されており、大事なことが集約されているので、すべての外科処置の基本となる。歯周外科に限らず応用できる部分なので、初学者のみならず、ベテラン歯科医師もそのきれいな縫合写真をアートとして眺めるのも良いだろう。
4章の「移植」では、ここからいよいよ外科術式の写真が増え始める。臨床家としては読みごたえのある部分に突入する。とはいえ、やはりその7~8割は、骨補填材、メンブレン、成長因子(主にエムドゲイン)のバイオロジーやエビデンスについて書かれており、このあたりにも著者らの徹底したこだわりが見て取れる。dPTFEメンブレンとePTFEメンブレンの違いが理解できている歯科医師は少ないのではないだろうか。多くの種類の骨補填材やメンブレンが発売されている現在、このようにまとめられている書籍が院内に1冊あると、とても頼もしく感じる。
圧倒的クオリティの60症例
世界的な手技をその手元で見る
そしてここまでの知識を総動員して、いよいよ最終章の「外科手術」につながる。ここでは圧倒的なクオリティの写真をもとに、60症例の手術が、まるでマイクロスコープ越しに見ているかのような大きさで供覧されている。その一部の症例においては二次元コードから動画で閲覧することもできた。世界の一流の外科医のオペを、その場でスマートフォンを使って見られるようになるとは、なんというすばらしい時代になったことかとあらためて思う。ほんの10年前までは、世界の有名なオペを見に行こうと思ったら、何日もかけて渡航し、費用をかけ、狭い術野を覗き込んだものである。これもデジタルカメラから始まった、あらゆるデジタルデバイスの恩恵だと技術の進歩におおいに感謝したい。
ぜひ、皆さんにはこの書籍をつうじて、世界トップクラスの症例を手元で見てもらいたい。そういう意味でも、この書籍はどのようなセミナーや海外研修と比べても引けを取らず、また、ずっと手元においておける点において価値が高い。書籍単体の金額を考えれば決して安くないが、臨床的価値から考えればけっしてそんなことはないと言い切れる自信がある。
最後に、このような書籍を翻訳した日本の若き歯科医師たちに敬意をもって感謝を伝えたい。この書籍が日本の多くの歯科医師たちの目にふれ、ひいては患者の利益につながるという点では臨床家としての貢献は計り知れないと思わずにはいられない。彼らの今後のますますの活躍を期待したい。