社会|2026年5月25日掲載
歯科矯正用アンカースクリューを併用した難症例供覧とディスカッションを展開
ケープレ vol.8 「変則的治療方針」開催
さる5月19日(火)、GREEN'S ORTHO(小松昌平代表)が「ケープレVol.8 『変則的治療方針』」をWeb開催した。
「矯正治療を楽しく学ぶ」をテーマとして、若手向けの矯正歯科治療関連コンテンツを発信するGREEN'S ORTHOの恒例企画「ケープレ」は、佐野良太氏(佐賀県開業)、牧野正志氏(千葉県開業)、大門 茂氏(福岡県開業)の3名が歯科矯正用アンカースクリューを用いたさまざまな症例を供覧し、実践的な治療戦略のアイデアをディスカッションとともに共有していく企画である。
今回は、特別ゲストとして茂木和久氏(千葉県開業)を招き、左右対称でない変則的な抜歯やスリーインサイザル仕上げ、左右で臼歯関係が異なる症例などを各氏が持ち寄り、症例供覧およびディスカッションを行った。
まずケープレメンバーから、牧野氏が下顎片側切歯の抜歯を行いスリーインサイザルで仕上げた症例、佐野氏が上下顎歯列正中線は一致しているもののハイアングルで左右の臼歯関係および垂直的位置が異なる症例、大門氏が他院での矯正歯科治療途中で口元をこれ以上後方へ下げたくないとして来院した患者の上下前歯歯軸傾斜角を考慮した症例について供覧した。このうち佐野氏は、「『変則的治療方針』は先天的欠如、歯の形態異常、下顎骨の偏位などを有する症例において、通常の治療方針である両側の小臼歯抜歯や左右対称の犬歯・臼歯関係の確立が困難または達成不可能な場合に選択される治療戦略である」「こうした症例では治療難度の軽減や天然歯列での咬合を確立することを優先し、必ずしも理想的とはいえないあるいは非対称性を許容した咬合での仕上げを計画的に行う必要がある」とした。ここでは担当医が治療選択肢や治療計画立案の引き出しを多くもつとともに、既存のセオリーをふまえつつも個々の症例に応じて柔軟に治療目標を再構築する臨床的想像力の重要性が示された。
引き続き茂木氏が「臼歯部歯肉退縮を伴う叢生症例に対するMARPE(MSE)とアライナー併用の1例」と題し、米国のWon Moon氏(Moon Principles Instituteファウンダー・CEO、BioTech Innovations共同創業者兼チーフイノベーションオフィサー)が開発した口蓋側方拡大装置MARPEを適用して非抜歯で治療を行った成人患者の症例を供覧した。氏は上顎臼歯部歯槽骨の頬口蓋側的幅径が狭く、交叉咬合の改善における治療難度が高い成人患者の口蓋にMARPEをTADsで固定して用いる、また患者自身がスマートフォンで口腔内写真を撮影し歯科医院へ送信することで経過観察を行うシステムにて拡大の様子を遠隔で観察するなどのアイデアを供覧しつつ、MARPEの応用成功のポイントや失敗しやすい条件などについて汎用的な情報をシェアした。質問やコメントの中には、TADs植立に対する心理的ハードルの高さをうかがわせるものも見られたが、茂木氏のていねいな解説により、参加者にとって導入を検討できる有意義な会となった。