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2021年6月1日掲載

モテる男のための「使える靴」のトリセツ(Vol.6)

モテる男のための「使える靴」のトリセツ(Vol.6)
Vol.6:新しい靴購入のススメ

高度成長期における男の革靴事情
 何をやってもうまく行かない、空回りする。だれにでも経験のあることであるが、このようなとき、皆さんはどうされるであろうか。ただひたすら転機をじっと待つか、トライ&エラーを繰り返しながら手を打ち続けるか、最善の方法はその人の性格やその時の状況によって異なる。私は、ぜひ新しい靴を買うことをおすすめしたい。

 私の父は昭和の時代に建築業を営み、日本の高度成長期とバブル経済を経験したが、仕事がうまく行かないときには決まって新しい革靴を買って帰って来た。ジンクスのようなものだったのか、それとも単にお洒落に目覚めただけだったのか、亡き今となっては知るよしもない。しかし高度成長期における男の革靴事情と、バブルのときのそれとは比べものにならないほどの変化があったように記憶している。

 「お洒落は足元から」というキャッチコピーがテレビ、ポスター、雑誌のそこかしこで散見され、バブル期の男女がそれに踊らされた。高度成長期の一般的な父親の革靴は、大半の人が1足を毎日履いて、履きつぶしたらまた新しい靴を履くという状況だったように記憶している。ボロボロの革靴は「一生懸命仕事をした証」という言葉も聞かれたようだ。そう、当時の革靴はたとえるならばアルミホイルのような存在で、使い切ったら新たなものを買うというスタイルが一般的だった。

 昭和40年代の遊園地の様子を写した古い写真に写る父親は、スーツにネクタイ姿であったり、夏の暑い時にはスーツのズボンにランニングシャツ1枚の人もいたりといった有様だった。それが、人々が豊かになるとともに、休日のお出かけにはゴルフ用のポロシャツを着るようになり、ジーンズを穿く世代も出てきて、色柄のシャツが一般に着られるようになる。それでも靴は、スーツに履く黒の革靴をすべての服装に履く向きが大多数ではなかったか。

 私の父に関していえば、まさにバブルに乗って靴の数が増えていったのを記憶している。仕事用の黒い靴以外にゴルフに行くための洒落たスエードやヌバックの靴、夏用の白っぽい靴、コンビの靴、ブルーもあり茶色もあった。建築業ということもあり、仕事に履く靴にはあまり凝らずに、遊び用の靴がどんどん増えていった。もちろん父だけでなく母の靴も同様に増えていったのは言うまでもない。

 日本中の皆の靴がどんどん増えていった時代に放映されたTVドラマ「北の国から」に印象的なシーンがある。先日亡くなられた主人公の田中邦衛さんの元妻、つまりは純と蛍の母(いしだあゆみさん)の葬儀に際し、喪主であり母さんの二度目の夫であった伊丹十三さんが、「お葬式にそんな汚い靴を履いていたら母さんが悲しむ」と2人に新しい靴を買ってあげるのだが、父さんが買ってくれた古い靴をその店で捨てられてしまう。母さんの新しい家庭には子どももいて、自分たちの母さんを取られたような気持ちを味わいながら葬儀を過ごした後でその古い靴を必死に探しに行くのだが見つからず、父さんへの思いが溢れて涙が止まらないというシーンだ。生活が豊かになって靴が増えても、人間の幸せの本質は変わらず、モノにではなくその思い出に宿る。

 また、バブル前夜の80年代に人気作詞家として活躍した松本 隆さんは、高度成長期にみずからが組んでいたバンド、「はっぴいえんど」でボーカルの故・大滝詠一さんにこう歌わせている。「でも幸せなんて、何を持ってるかじゃない。何を欲しがるかだぜ」

お気に入りの靴を履いて外に出かけよう
 話を戻そう。靴というのは歩くための道具である。活動的になって行動範囲が広がるとそれに応じて靴が活躍し、自然と靴の数が増えるものだ。一方、新しい靴を買うと、当然その靴を履いてどこかに出かけたくなる。そして、この出かけるという行為は、人生において本当に尊い価値をもったものだ。みずからの意志で歩みを進めるということは、心持ちを前向きにし、目を開かせ、世界のありのまますべてを見ることに他ならない。

 何をやってもうまく行かないときは、じっと待つことも確かに必要だが、内向きに閉じこもり漫然としていたら、いつ訪れるかわからない転機や勝機を逃してしまう。このチャンスを逃さず捉えるには、しかと目を見開き、前向きな姿勢で世界のありようを受け止めていなければならないのだと思う。新型コロナウイルスの影響でこもりがちな日々が続くが、多くの人々が気兼ねなくお気に入りの靴を履いて出かけられるようになり、多くの人々がそれぞれの勝機をつかめるようになることを切に願う。


写真1:DUCAL デュカル ホワイトバックス スニーカー 60,500円(税込み)

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