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2013年3月1日

シンポジウム「口腔の公衆衛生・疫学研究の世界の最前線」開催

Richard Watt氏らを招聘

 さる3月1日(金)、アルカディア市ヶ谷(東京都)にて、「シンポジウム 口腔の公衆衛生・疫学研究の世界の最前線」(厚生労働科学研究費長寿科学総合研究推進事業「日英の高齢者の健康と健康格差の比較研究」、近藤克則代表、東北大学大学院歯学研究科共催、日本歯科医師会、日本口腔衛生学会、深井保健科学研究所後援)が開催され、約90名が参加した。

 本シンポジウムには、厚生労働省が発表した今後10年の健康政策である健康日本21(第二次)に「健康格差の縮小と社会環境の改善」が盛り込まれたことを受け、当分野において世界的に研究をリードするRichard Watt氏(ロンドン大疫学公衆衛生学部教授)、Georgios Tsakos氏(同大講師)が招かれた。

 Watt氏は「Social determinants of oral health(口腔の健康の社会的決定要因)」と題して登壇。まず統計において、英国内・欧州全体における個人および地域間の経済格差と健康格差に相関がみられることに注目。また、かねてより口腔疾患が生じる原因は病因論に焦点が当たりがちで、個々人が置かれている社会的状況(社会的決定要因)に原因を求める視点が欠けていることを指摘し、後者に準じた政策が必要だとした。今後は、指導的立場にある人間に対して働きかけること、一部の重篤患者に限局した従来型の「ハイリスクアプローチ」から、患者全体を包括した「ポピュレーションアプローチ」へと口腔保健政策の形を移行させることが重要だと指摘した。

 つづいて、Tsakos氏が「International comparisons in oral health inequalities(口腔の健康格差の国際比較)」と題して登壇。まず、健康格差が各国の経済格差・社会保障制度の充実度に相関することを指摘した。そのうえで、世界の社会保障制度を主にリベラル・保守的・社会民主的の3つに分類し、なかでも全員に福祉の提供の機会がある「社会民主的」な社会保障制度(スウェーデンなど)が理想だとした。しかし、スカンジナビア諸国でも健康格差が生じている統計が存在することを挙げるとともに、使用する基準によって統計結果が変わることについて触れ、現段階では社会保障制度の充実度が一概に健康格差に影響すると結論づけられないことも指摘した。