2018年7月29日掲載
「歯科のチカラでずっと美味しく、そして楽しく 家族の笑顔から考える歯科の話。」をテーマに
株式会社ヨシダ、第8回 DNA特別講演会を開催

午前中は、はじめに栂安秀樹氏(北海道開業)が「食の喜びを伝える役目とは」の題で登壇。栂安氏は、疾病構造や住民意識の変化により、患者を地域で診る横の連携が必要となるなど歯科医療の立ち位置が変わってきたことを示したうえで、自院の取り組みを例に、家族関係や生活歴、栄養状態、機能、安全に食べられるかなど「生活モデル」も診ることのできる歯科医療者にならなければいけないと主張。また、3月末に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」が「人生の最終段階の決定プロセスに関するガイドライン」に変更されたことについても言及し、看取りをともなう医療体制が、今後歯科にも求められてくると述べた。
続いて、藤田博史氏(精神分析医・美容外科医・麻酔科医、東京都開業)が「精神分析医・美容外科医の目から見た歯科診療」の題で登壇。歯科が行いうる美容医療として、ガミースマイル、舌小帯短縮症、フィラー施術について触れた。とくに、手軽だとされるフィラー施術については内出血や腫れ、チンダル現象、組織壊死などの危険性について注意を喚起した。
スペシャルランチョンセミナーでは、松嶋啓介氏(株式会社 Accelaire 代表取締役、「KEISUKE MATSUSHIMA」オーナーシェフ)の「うま味たっぷり弁当」が参加者に提供され、素材の味を感じやすくするために細長くスライスした食材を使ったラタトゥイユや、ゆっくり噛み、口の中で混ざり合うことでうま味を感じられるサラダなど、料理を通して「噛んで味わうこと」の重要性を訴えた。
午後は、今井一彰氏(内科医、福岡県開業)が「すべての人が鼻呼吸で元気生活 ~最新論文から読み解く口呼吸と格差問題~」と題し登壇。ブラジルの耳鼻咽喉科のデータを中心に呼吸の違いにより顎や顔貌が変わってくるとしたうえで、鼻呼吸の重要性を説いた。小児期から食べること(舐める、かじる、しゃぶる)、呼吸することをしっかりと学習させ、閉じることのできる口をつくらなければならないと述べた。
松尾浩一郎氏(藤田保健衛生大教授)による「超高齢社会で輝く歯科のプレゼンス!」では、口腔機能低下症と栄養の関係性、口腔衛生管理を中心に詳説。口腔ケアの均てん化と個別化においては現場に即したアセスメントが重要だとし、「OHAT:Oral Health Assessment Tool」を紹介した。食べることは「美味しい物をしっかり噛んで飲み込むこと」であり、それを支援できるのは歯科だけだと強調した。
最後に質疑応答が行われ、参加者からは歯科訪問診療現場における悩みなどが聞かれた。命の入り口である口腔を歯科が最期までどのように守っていくべきか、歯科には何が求められてくるのか、考えさせられる会となった。