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2019年4月18日

2019年東京矯正歯科学会春季セミナー開催

「早期治療における叢生歯列の拡大を再考する」をテーマに

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 さる4月18日(木)、有楽町朝日ホール(東京都)において、東京矯正歯科学会(槇 宏太郎会長)の2019年春季セミナーが開催され、750名を超える会員らが参加した。

 過去最多の参加者数となった今回のセミナーでは、「早期治療における叢生歯列の拡大を再考する」という、いまだ結論が得られておらず議論が紛糾しているテーマについて、3名の演者が登壇した。

 まず大坪邦彦氏(東京都開業)が、「混合歯列期における叢生症例の歯列弓拡大」と題し、反省症例を含む多くの混合歯列期の叢生症例を供覧しながら、拡大装置適応が望ましいケースに関して私見を述べた。また口の成長を見守り、患者や保護者の不安を解決し、必要があれば介入していく「かかりつけ矯正歯科医」を提案する一方で、成長に歯列の改善をゆだねた際に「歯科医院行ったのに何もしてくれなかった」と患者や保護者に誤解されることのないよう、専門家の眼をもって成長を見守ることの重要性や、今治療を行う/行わないことがどのような見解に即したものなのか、また拡大装置についても明確に説明できることが重要であるとした。

 次に登壇した村松裕之氏(東京都開業)は、「早期治療にあたる歯科医師、矯正専門医としての立場から」と題し、自院で手掛けたDental ageIIC~IIIAの70症例について、セファロ分析の重ね合わせなどを用いつつ検討した結果について述べた。氏は結論として、拡大治療は今回検討した時期の患者には奏功したといえるが、それ以降の時期の患者については不明であり、また永久歯列となるまで拡大装置を継続使用する、保定を確実かつ長期に行う、骨格的な問題を見過ごしにしないなど、こうした結果を拡大解釈せず、慎重に受け取る必要があることを申し添えた。

 最後に登壇した五十嵐 薫氏(東北大教授)は、「叢生の治療を目的とした歯列弓の側方拡大について」と題し、海外の論文を中心にエビデンスの側面から本テーマを論じた。一般によく主張される側方拡大の適応には「歯列弓の狭窄」「軽度~中等度の負のアーチレングスディスクレパンシー」「II級の歯列弓関係」「鼻腔通気の改善」があるが、それぞれエビデンスレベルがかなり違うこと、上下顎歯列の拡大限度の数値、側方拡大によって増える下顎の歯列弓周長は大きくはないこと、加齢による歯列弓周長の減少について示し、加えてバクシネーターメカニズムや機能的な許容範囲を考えあわせ、移動後の歯列の長期安定性を図ることの重要性について述べた。

 今回モデレーターを務めた新井一仁氏(日歯大教授)は、「ひと言に拡大治療といっても、上顎と下顎はまったく違う生きものといって良いものであり、今後は本セミナーにおいてもそのようにとらえたうえでさらなる検討が必要」とし、本学会会長の槇 宏太郎氏(昭和大教授)は「本議題に関しては、今回に終わらせることなく、こうした議論を続けていくべき」と締めくくった。