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2019年7月14日

医科歯科連携セミナーin愛知開催

歯周病と糖尿病の関係性を中心とし、多角的に医科歯科連携が語られた一日

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 さる7月14日(日)、愛知学院大学楠元キャンパス(愛知県)において、医科歯科連携セミナーin愛知(おしむら歯科医院主催、押村憲昭副院長)が、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、看護師など多職種にわたる聴講者を集め、盛大に開催された。

 最初に登壇した稲垣幸司氏(愛院大短期大学部歯科衛生学科教授)は、歯周病と糖尿病の双方向関係について基礎的な内容を含めて解説。糖尿病治療(コントロール)によってBOPは低下すること、また、歯周病治療によってHbA1cの数値を下げられる可能性があることなどを、文献および実際の症例を用いて説いた。

 次に登壇した中澤正絵氏(医療法人盟陽会富谷中央病院、歯科衛生士)は、「糖尿病療養における歯科衛生士の役割―歯科衛生士としてできる改善と予防―」をテーマに講演を展開。自身も宮城県糖尿病療養指導士の資格をもつ中澤氏は、非外科の歯周治療、ポケット深さ改善の重要性、“口から行う糖尿病予防”という啓発の意義、糖尿病患者に対して歯科衛生士が行う食事指導、お薬手帳を確認することの重要性などに関してていねいに解説した。さらには、歯科衛生士の役割は炎症の予防・消去であるとし、メインテナンスにおけるスピード感のあるプロケアと、セルフケアの指導の大切さを説いた。

 続いて登壇した西田 亙氏(愛媛県開業、医師)は、「世界中で湧き起こる糖尿病領域の歯科医科連携」と題した講演を展開。「現在行われている栄養指導は味覚障害、咀嚼機能を無視している」と述べたうえで、糖尿病専門医の立場から、歯科における栄養指導の重要性に言及した。そして、「偏食の背景には味覚障害があり、軟食の背景には咬合の問題がある」と説いた。また、今後の口腔の健康管理については、看護師や管理栄養士と違い、唯一「口腔から始まる全身への感染と予防」にかかわることのできる歯科衛生士が担う役割が非常に重要である、と述べた。また同時に、最新の潮流である歯周病原性全身感染症について解説し、例えば膵臓炎症(Pancreatic Inflammation)は糖尿病と、神経炎症(Neuro Inflammation)は認知症と、それぞれ密接に関係しているという知見を紹介した。さらには、歯を失うことがいかに高齢者の全身の健康に影響を及ぼすかを説き、だれにでもわかる言葉で口腔衛生指導を行うことの重要性を強調した。

 最後に、本セミナーを主催した押村憲昭氏(愛知県勤務)が登壇。地域における医科歯科連携の実際について語った。氏は、自身の医科歯科連携のきっかけとなった皮膚科との連携を振り返り、実際に根管治療をしたら皮膚疾患が改善した症例を供覧した。そして現在、自身の歯科医院が地域の医院と密に連携することで見えてきた点がたくさんあると述べ、かつて一軒一軒、地道に地域のクリニックを訪問しながら連携を模索していった体験を語った。さらには、「院長以外によき理解者がいること」など、連携しやすいクリニックの特徴について解説した。そして、噛めないことと低栄養は直結しており、「われわれ(歯科医療従事者)は命にかかわる仕事をしている」ことを熱弁し、終日にわたり充実した本セミナーを締めくくった。