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2019年9月16日

公益社団法人日本小児歯科学会第34回関東地方会大会・令和元年度総会を開催

小児歯科関連の講演および発表が多岐にわたって展開される

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 さる9月16日(月)、文京シビックセンター(東京都)において、公益社団法人日本小児歯科学会第34回関東地方会大会・令和元年度総会(浜野美幸大会長、木本茂成理事長)が、参加者900名以上を集め盛大に開催された。

 最初の基調講演では、新谷誠康氏(東歯大教授)が「日本の小児歯科を取り巻く現状」と題した話を展開。国際小児歯科学会(IAPD)およびアジア小児歯科学会(PDAA)設立の経緯と現況について語った。そして、Early Childhood Caries(ECC)への罹患率について触れ、その数値は日本では低いものの、世界的にみると高い傾向にあり、歯科治療環境の整備を含めた対策が必要不可欠であるとの見解を述べた。続いて、近年の小児歯科医療において世界的に話題となり、調査が進められている疾患であるMolar Incisor Hypomineralization(MIH)について言及した。MIHは第一大臼歯と切歯に限局して発症するエナメル質形成不全であり、諸外国での発症率の高さはもちろん、日本国内でも実に約20%の小児が罹患しており、世間的にはあまり認知度が高くないが、今後の対応が急がれる疾患であると説いた。さらに、日本国内においては低ホスファターゼ症(HPP)によるセメント質形成不全により乳歯早期脱落を起こす患者がいるが、医師や保護者もその疾患の存在に気付いていない場合が多く、健診などにおいて歯科医師が発見、対処することが大切であると述べた。

 次に登壇した帖佐悦男氏(宮崎大教授)は、整形外科領域の立場から、子どものロコモティブシンドローム(ロコモ)予防と対策の必要性について解説した。氏によれば、総じて現代の子どもは年々基礎体力が不足しており、そのまま放置しておけば40代でロコモになってしまう可能性があるとのこと。スマホやネットといったものに依存せず、積極的かつ適正にスポーツにかかわるなど、体力向上に努めさせることが大切だと述べた。また、全身的な機能低下につながるオーラルフレイルの予防の重要性を説き、子どもの頃からオーラルロコモ対策を行うことで、口腔機能改善、ひいては全身の機能の改善につながると述べた。豊富な動画を用いてわかりやすく「子どものロコモ予防」を解説した帖佐氏の講演には、聴講者も興味深く耳を傾けていた。

 午後の臨床講演Ⅰでは、小方頼昌氏(日大松戸歯学部教授)が「歯周病と全身疾患の関係と歯周組織再生療法」と題した講演を展開。歯周病が生じる仕組みや、糖尿病をはじめとした全身疾患とのかかわりについて、基本的な内容から解説した。また、歯周病患者に対しフラップ手術を行い、骨欠損部にエムドゲイン®ゲル、また特にリグロス®を応用して、歯周組織再生を図った症例などを供覧し、その有用性を説いた。

 臨床講演Ⅱでは、齊藤正人氏(北海道医療大教授)が登壇し、「MTAを活用した小児の歯内療法」と題した講演を展開。現在の歯内療法で広く用いられているMTAの特徴を述べるとともに、とくに幼若永久歯に対する治療には有効性が高いと述べた。一方、小児の歯内療法を考える際、乳歯と幼若永久歯は、歯根吸収もしくは歯根形成の過程にあるため、臨床的根管長および根尖孔の大きさが絶えず変化しており、治療の難易度は高いと述べた。そのうえで、アペキシフィケーションにとって代わる治療法として、パルプ・リバスキュラリゼーション(再生歯内療法)が有効であると説き、本治療法を施行した症例をはじめ、各種の小児の歯内療法症例を供覧し、聴講者の関心を引いた。

 本大会ではほかに、ハンズオンセミナー、ランチョンセミナー、認定歯科衛生士地方会研修セミナー、若き研究者の集い、そしてピーター・フランクル氏(数学者・大道芸人)を招聘した市民公開講座など、非常に充実したプログラムが組まれた。いずれも盛況を博し、本学会関東地方会の今後のますますの発展を期待させる一日となった。