Quint Dental Gate 歯科のコミュニケーションサイト

文字サイズ
標準
特大

トピックス


2020年2月22日

日本義歯ケア学会 第12回学術大会開催

全国から120名あまりが参集

ログインされますと、関連書籍が表示されます。
会員でない方はこちら
(※関連書籍がないトピックスは表示されません)

 さる2月22日(土)、23日(日)の両日、愛知学院大学歯学部(愛知県)において、日本義歯ケア学会 第12回学術大会(武部 純大会長、藤波和華子準備委員長、水口俊介理事長)が開催され、全国から120名あまりが参集した。

 22日午後からは、理事会、「義歯ケアマイスター試験」(同学会が、義歯ケアに関する知識・技能を十分に備え、正しい知識を使用者・家族・介護者に伝えることができると認定した者に与える名称)、一般口演12演題、および懇親会が行われた。また23日午前からは、総会、ポスタービューイング、および特別講演2題が行われた。以下に、シンポジウムおよび特別講演の演題とその概要を示す。

1)特別講演「地域包括ケアの評価指標と在宅医療の質の向上のための多職種協働」(野田正治氏、愛知県医師会理事)
 本講演では、医師の立場から標記について詳説。まず、「地域包括ケアにおけるアウトカム指標は存在していない」という前提を基に、厚生労働省や警視庁、また愛知県在宅医療サポートセンターによるさまざまな死亡率・死亡数の年次推移の統計について検討。これらから、自宅での看取り率、および看取りに至らず死体検案がなされた率などについて示し、独居者を検死に至らず看取ることが地域包括ケアにおける重要なアウトカム指標のひとつとなることについて示した。

 また、歯科医師・歯科衛生士のICT(Information and Communication Technology)サービスへの積極的な参加についても提言。演者が所属する瀬戸旭在宅医療介護連携推進協議会では「電子@連絡帳サービス」(インターネットイニシアティブ)を活用し、1人の患者に対して医師・看護師・薬剤師・作業療法士・ケアマネージャー・介護スタッフなどが既往歴や処置に関する情報を共有しているが、そこへの歯科医師・歯科衛生士の参加は自由であるにもかかわらず1%以下と非常に少なく、医療スタッフが歯科について質問したいにもかかわらず出来ない状況があること、また歯科医師・歯科衛生士にも患者の背景について知りたい局面があるはずである、とした。

 そして在宅医療の質の向上のためには(1)せん妄対策、(2)摂食・嚥下機能支援、(3)ACP(Advance Care Planning)、(4)緩和ケア、(5)地域リハビリテーション、の5点が重要であり、それぞれについての要諦について解説した上で、最後に取り組むべき方向性として(1)独居者へのアウトリーチ(積極的に対象者の居る場所に出向いて働きかけること)、(2)在宅医療・施設医療の質の向上、(3)多職種連携、そして(4)災害対策としてのICT)の利用促進、を挙げた。

2)特別講演「超高齢社会に求められる義歯について ―あなたはどのように対応しますか―」(杉本太造氏、愛院大歯学部在宅歯科医療学寄附講座)
 本講演ではまず、厚生労働省歯科疾患実態調査による補綴物の装着の有無と各補綴物の装着者の割合について示し、高齢者の義歯装着率が高いことについて提示したうえで、認知症患者に対して義歯を装着した症例を供覧。認知症高齢者の行動特性および空間認識の特性から、術者としては十分な義歯を製作したつもりでも正しく装着されない場合があることを示し、歯科医師の手で患者の口腔内に装着して診療を終えるのではなく患者自身が自ら装着・使用できるかを確認することが重要であるとした。

 また、本講演では上述の野田氏が「医師の立場から、歯科医師の講演を聴講して疑問に感じる点」について、講演をあえて遮りながら随時質問(「施設から義歯の製作依頼があるときは、だれから連絡が来るのか」「医師の知らない間に歯科医師が介入して義歯治療が終わっていることがあるが、それはなぜか」など)を行う企画となっており、理解をいっそう深めていた。

 そのうえで、まとめとして「要介護者の口腔環境、口腔機能、認知力が一人ひとり異なるため、高齢者の能力に応じた義歯の対応をしなければならない」「歯科医療関係者は医療関係者、介護スタッフや家族などとの密接な連携のもとで義歯を製作しなければならない」とした。

 また、会場では義歯のケア(義歯洗浄材やリライン材など)にかかわる企業展示も多数行われ、こちらも盛況となっていた。なお、次回は昭和大学歯学部において2021年に開催予定とのこと。