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2021年5月30日

第3回国際歯科医療安全機構総会・学術大会がWeb配信にて開催

歯科の立場から感染拡大防止のためにできることを考える大会に

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 さる5月30日(日)、一般社団法人国際歯科医療安全機構第3回総会・学術大会(佐々木朗大会長、瀬戸●(かん)一[●は日へんに完]理事長)が、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科口腔顎顔面外科学分野主管のもと、Web配信にて開催された。本大会は昨春に開催が予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の影響による2度の順延を経て開催されたものである。

 シンポジウム「新型コロナウイルス感染症に対して歯科医はどう対応すべきか?」では、最初に西山謹吾氏(高知大教授)が「新型コロナ感染症時代の災害対応を考える」と題して特別講演を行い、流行前の避難所と比較しながら、三密回避、検温や消毒の徹底、導線の分離など、感染対策を施した避難所での対応を紹介。また、未知の感染症はだれもが不安や恐怖に駆られるため、救護者に対する周囲の精神的支援も重要と強調した。

 基調講演「ウィズコロナ時代の感染拡大防止策を歯科から考える」では、理事長の瀬戸氏が、新型コロナウイルス感染症は口腔が最大の感染現場であるとの認識のもと、協力関係にある歯科医学関連学会との相互連携によるCOVID-19対策の研究開発の推進をはかるなど、本機構の取り組みや展望を提示した。さらに歯科の卒前教育に取り入れる必要があると訴え、大学における感染対策患者安全講座の創設を提唱した。

 続いて4名のシンポジストが講演。古郷幹彦氏(阪大名誉教授)は「歯科口腔外科診療におけるチェアーサイドエアゾール飛沫対策」と題し、自身らが以前取り組んだ診療時の血液のエアゾール飛沫の分析より、術者の高い曝露率やチェアーより遠方でも飛沫が確認された結果を紹介し、患者の唾液や血液のエアゾール飛沫は長期間浮遊しているとの認識のもとに感染対策を行うことの重要性を述べた。

 里村一人氏(鶴見大教授)は「微量唾液を検体としたuser-friendlyなSARS-CoV-2迅速スクリーニング検査法の確立」と題し、食品分野で最近開発されたモバイルPCR検査装置を応用した、小規模クリニックなどにおける迅速かつ正確なスクリーニング検査法の確立に向けた取り組みを紹介。自院の看護師や歯科衛生士の協力のもとに実験をした測定結果より、唾液中のRNAが検出可能であったことを報告した。

 春日井昇平氏(総合南東北病院顎顔面インプラントセンター長)は、「洗口液使用による感染予防の可能性」と題し、ポビドンヨードやCPC(塩化セチルピリジニウム)など洗口液の各種成分について効果を概説。COVID-19感染にかかわるACE-2受容体が、唾液腺やすべての口腔粘膜に存在することをふまえ、感染予防において洗口液の使用は有効との見解を述べた。

 瀬島俊介氏(バイオメディカルサイエンス研究会理事長)は「SARS-CoV-2対策に有効な消毒薬とモバイルPCRの応用」と題した講演において、大阪大学を中心に開発が進められている消毒剤MA-T(要時生成型亜塩素酸イオン水溶液)について、その高い安全性、安定性、有効性を紹介し、さらなる普及に向けて期待を語った。

 講演後の総合討論は、時間を大幅に延長して活発な議論が繰り広げられた。喫緊の課題である感染症対策において積極的に取り組んでいく、本機構の強い決意を感じさせられた。