2023年3月1日掲載

「Innovation & Future Orthodontics 革新と将来の歯科矯正」をテーマに

WSLO2023・第9回世界舌側矯正歯科学会開催

WSLO2023・第9回世界舌側矯正歯科学会開催
 さる3月1日(水)から3日(金)の3日間、WSLO2023 ・第9回世界舌側矯正歯科学会(橋場千織大会長、布川隆三会長)が開催され、600名以上が参集した。

 「Innovation & Future Orthodontics 革新と将来の歯科矯正」をテーマとした本会では、アライナー矯正治療の広がりや治療技術の変容にともなう抜歯・非抜歯の選択の変化など、矯正歯科治療の転換期ともいえる時代に矯正歯科医が備えるべき知見について共有・議論された。なお本会は、前回2019年のスペイン・バルセロナでの開催から、新型コロナウイルス感染症拡大による延期を経て、会場を大阪から神戸に変更して実現した。

 本会では舌側矯正治療についてはもちろん、包括的歯科治療やデジタル矯正治療、アライナー矯正治療関連の講演も多く実施された。特にサブテーマともいえる舌側矯正治療とアライナー矯正治療の比較やハイブリッド治療に関する講演は、国内外の演者により5題行われた。

 そのうちTakis Kanarelis氏(ギリシャ、次期ヨーロッパ舌側矯正歯科学会会長)は、「Oral Impacts of Aligners versus Fixed Self-Ligating Lingual Orthodontic Appliances」と題して舌側矯正装置とアライナー型矯正装置装着時の発音障害を比較した研究について解説した。またWon Moon氏(韓国・亜州大学校教授)は、「The New Age of Orthodontics with New Innovations: Overcoming the Limitations and Charting the Unknown Territories with MSE and Aligner Systems…How Does a Lingual System Fit In?」と題し、上顎拡大装置・MSEをはじめ長年にわたるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)歯学部における研究開発と臨床の成果を振り返りつつ、エアウェイの改善に上顎拡大装置が大いに貢献できること、また現在のアライナーの弱点を克服する矯正装置を開発していることを述べ、今後も変化し続けるであろう矯正歯科の分野で未知へのチャレンジを続けていくこと、そして矯正歯科治療においては装置の別ではなく用いる人間がより重要である旨が語られた。

 またシンポジウム「Lingual Appliances vs Aligner」には、アライナー矯正治療を行う立場から有本博英氏(大阪府開業)、賀久浩生氏、尾島賢治氏(いずれも東京都開業)、舌側矯正治療を主に行う立場からGiuseppe Scuzzo氏(イタリア開業、フェラーラ大学矯正歯科非常勤講師)、竹元京人氏(東京都開業)、廣 俊明氏(長野県開業)が登壇し、それぞれの矯正装置の選択理由や臨床コンセプト、そして実際の症例を供覧した。舌側矯正治療・アライナー矯正治療のいずれの立場にあっても患者の幸福につながることが目標である点では一致し、和やかな雰囲気のなか閉会となった。

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