2024年2月号掲載
歯質保存にすぐれ、メタルフリーな治療を可能にする“ブリッジ”
【PR】「1(シングル)リテーナーオールセラミック接着ブリッジ」を臨床に取り入れてみませんか?
※本記事は、「新聞クイント 2024年2月号」より抜粋して掲載。
接着ブリッジは近年、その臨床成績が向上し、さらにメタルフリー、MI という時代の要請を満たす前歯部欠損補綴の一治療選択肢として世界的にその臨床応用が再燃しています。そしてこのたび、クラウン・ブリッジの分野で名高い大谷一紀氏が、『1リテーナオールセラミック接着ブリッジ臨床ガイド』と題した書籍を執筆、本年2月に刊行しました。
本欄では、接着ブリッジの概要と、同書の出版経緯や特長等を語っていただきました。(編集部)
接着ブリッジとは?
前歯部1歯欠損の一般的な補綴選択肢には、インプラント、3ユニットブリッジ、部分床義歯が挙げられます。
そのうえで、仮に患者さんがなんらかの理由で3ユニットブリッジを選択され、その欠損部の両隣在歯が健全歯あるいはそれに近い状態で残存しているとします。すると、歯科医師は、それら両隣在歯のエナメル質を大きく削らなければならないことに少なからず抵抗感や罪悪感をもたれるのではないでしょうか?
本書は、その両隣在歯の切削を限りなく最小にできる“接着ブリッジ”といわれる補綴法を解説したものです(☞本書CHAPTER 1で解説)。
以前までの接着ブリッジ
接着ブリッジの基本的な構造は、ポンティック舌側部にリテーナーといわれる薄いフレームワークを維持装置として付与して、これを隣在歯の舌側に接着させるものです。接着ブリッジは約半世紀に及ぶ歴史のある補綴法であり、一時は臨床の現場で世界的に盛んに臨床応用されたようです。しかし、その当時はその補綴法に耐えうる接着技術に欠けていたのか、あるいは臨床家の技術不足か定かではありませんがブリッジの脱離があいついだようです(☞本書CHAPTER 1で解説)。
そして以後、一般の歯科医師からは敬遠され、総体的には、今ではごく一部の補綴家しか行わない、マニアックな補綴法だとみなされている印象があります。私にも、以前まではそのような偏見がありました。
接着ブリッジは新しい時代へ
それが覆ったのが、私がまだ大学の講座(クラウン・ブリッジ)に所属していた2006 年に、留学から帰国された医局の先輩が行った講演を拝聴した時です。それまでの私の接着ブリッジのイメージは、フレームワークは金属製で、リテーナーを欠損の両隣在歯に付与する2リテーナーメタル接着ブリッジでしたが、その先輩が提示されていた臨床例のフレームワークはオールセラミック製(酸化アルミナ)で、しかもリテーナーは片側のみ、すなわち1(シングル)リテーナーの臨床例でした。さらにその講演で、1リテーナーの設計とすることで2000年以降の前歯部接着ブリッジの臨床成績は非常に良好であることを知りました(☞本書CHAPTER 2で解説)。そして、その頃はちょうどジルコニアセラミックスが日本で使用できるようになった直後で、私はジルコニアをこの1リテーナー接着ブリッジのフレームワーク材料に使えば、メタルフリーでありながら堅牢で、歯質削除もより少なくて済む接着ブリッジ臨床が可能になると考えました。
一方で、当時はジルコニアと歯質の接着強さに不明点があり、補綴装置の維持を接着に完全に依存する接着ブリッジへのジルコニアの使用には不安もありました。しかしその後、MDP(リン酸エステル系モノマー)含有のボンディング材を用いて接着操作を行うことで、歯質とジルコニアが強固に接着することが文献的に証明され、また私自身の通常のクラウン・ブリッジの臨床でもその手ごたえを得ていました。
症例を重ね、その臨床を確信
そして、2014年にジルコニアセラミックスをフレームワーク材料に用いた1リテーナー接着ブリッジを初めて行い、以来、前歯部の1歯欠損においては、患者がこれを選択し、適応症に合致する限り、その臨床を行ってきました。そうして短中期にはなりますが一定数の経過を見てきて、近年応用ではこれを前歯部1歯欠損の一補綴選択肢にできると確信し筆を執りました。
本書執筆の動機の1つは、私がその臨床を行ううえで悩んだり困ったときに参考にできる文献や書物が限られていたからです。
本書の特長
本書を執筆してみて、接着ブリッジの臨床はその予知性を担保するうえでは、適応症の選択(☞本書CHAPTER 3で解説)はもちろん、接着操作と咬合付与が大きな鍵を握ることを再確認しました。特に接着操作はかなりシビアに行わなければならず、審美性を獲得するうえではその良し悪しが治療の成否を決めます。欠損部顎堤基底面のマネジメントとラボコミュニケーションですね。
本書は全4章構成ですが、それら臨床工程の実際を、その約半分のページ数を割いてステップバイステップで詳細に解説しています。なかでも以前から質問を受けることの多いプロビジョナルレストレーション製作や接着操作の解説には、特に多くのページを割きました(☞本書CHAPTER 4で解説)。
読者へのメッセージ
接着ブリッジは「脱離する」というイメージをもたれがちですが、接着技術が進化した現在においては、適応症に合致し、接着のプロトコルを順守するかぎり従来の3ユニットブリッジと遜色ない成功率、生存率が得られます。
歯の寿命と歯質の残存量がおおいに相関することは、文献的にも、歯科医師であれば経験的にも異論がないでしょう。歯質の保存にすぐれ、メタルフリーで治療可能な1リテーナーオールセラミック接着ブリッジの臨床を、本書を通じて1人でも多くの歯科医師に知っていただければうれしいですね。(談)
