2024年8月号掲載
『THE ALIGNER ORTHO アライナー矯正治療の最適解』を読む
【PR】アライナー矯正歯科を楽しもう。 アライナー矯正歯科をもっと知ろう。
※本記事は、「新聞クイント 2024年8月号」より抜粋して掲載。
小社2024年6月の新刊として、『THE ALIGNER ORTHO アライナー矯正治療の最適解 ALIGNER RADIO BOOK』(以下、THE ALIGNER ORTHO)が刊行されました。本欄では、有本博英氏(医療法人イースマイル国際矯正歯科理事長)に、本書の見どころを語っていただきました。
(編集部)
Zoomを介した大好評のWeb配信番組「ALIGNER RADIO」を元にした書籍
アライナー矯正治療は、IOSの普及とともに爆発的に広まりました。インビザライン・ジャパン社が日本で正規にiTero Elementを販売開始したのは2017年ですが、私はそれ以前のiTero2.9が輸入開始された2014年秋より本格的にアライナー矯正治療を始めました。当時は参考になる成書もなく、論文も頼りにならず、国内外の経験豊富なドクターの講演を聞きにあらゆる機会を見つけて情報収集しました。そして各講師が自分の経験を元に限られた時間で症例について語る中から、何か参考になることを自分のケースに取り入れ、経験を積み重ねてきました。アライナー矯正治療は、まさにエビデンスベースならぬ、エクスペリエンスベースの治療なのです。
そのアライナー矯正治療は進化の真っ只中であり、今も治療法について完全な答えを得ることはできません。そのような状況で少しでも本質に近づくには、古代ギリシャから行われてきた「対話」こそが有効な手段となります。本書『THE ALIGNER ORTHO』は、2021年に音声SNS・Clubhouseで出会った南舘崇夫氏と岡野修一郎氏が始めた「ALIGNER RADIO」というZoomを介した深夜配信の症例対話シリーズを元にしています。ここではAlign Technology社の症例コンテストであるInvisalign Peer Review Awardを4度も受賞したアライナー矯正臨床のエキスパート岡野氏の症例について、大学院歯科矯正科を修了した南舘氏が徹底的に質問し、対話を通じて本質に迫っていきます。
岡野氏のアライナー症例を南舘氏が丸裸に!
私の矯正歯科治療のベースはGreenfieldのCADテクニックですが、もっとも勉強になったのは症例を徹底的に掘り下げて解説するセミナーでした。パノラマ1枚で30分余り論議するセミナーは、不正咬合とは何か? 矯正歯科治療とは何か?を深く考えさせるものでした。ALIGNER RADIOでは、岡野氏の症例をレトロスペクティブに2時間以上かけて南舘氏が丸裸にします。南舘氏の質問は最新の論文知見も交えたもので、ライブで同世代の岡野氏に対し何の遠慮もなく行われます。そして時に視聴者を交えた白熱した議論が展開されます。この相当マニアックな深夜配信は、毎回数百名が視聴するほどの人気を博しています。
アライナー矯正治療について、これほど詳細な解説を見たことがない
本書はその対話をあらためて書き起こし、図表による解説と二次元コードからの動画解説も加えた超マニアックな1冊です。アライナー矯正治療について、これほど詳細な解説を私は他に見たことがありません。表面的にはけっして見えてこない治療の匙加減を視覚化し、治療の背後にある思考の流れを理解する手助けをしてくれます。特に岡野氏が予測実現性を重視したゴール設定に徹底的にこだわっていることがよくわかります。アライナーが発するエネルギーをいかに効率よく使うかということにフォーカスし、現実的なゴール設定とその実現に向けたステージングやアタッチメントの工夫が詳述されています。これらの流れを理解すれば、矯正歯科治療に完璧な症例は存在せず、つねに何らかの妥協やコンペンセーションが必要であるということを考えさせられます。そして、アライナー矯正治療を成功させるためにはワイヤー矯正治療に比べても、はるかに細やかな調整と洞察を必要とすることがわかります。
個人的に興味深かったのは、インビザラインG6で治療できるならノーアタッチメントでも治るのではないかという発想と、実験的アプローチや光加速装置を使用することでアライナーメカニクスを加速的に理解してきた岡野氏自身の進化の経緯など、まさにアライナー矯正がエクスペリエンスベースの治療であることがわかるエピソードです。
アライナー矯正治療の勘どころと奥深さが理解できる
とてつもなく価値のある1冊
本書全体のアートディレクションをデザイナーでもある南舘氏が監修しており、フォントの使い方や見やすいイラストデザインなども他の専門書とは一線を画すものになっています。
アライナー矯正治療を始めたばかりのドクターにはやや難解かもしれませんが、ある程度の経験があるドクターには、徹底的に読み込むことでアライナー矯正治療の勘どころと奥深さが理解できるとてつもなく価値のある1冊となるでしょう。
