2019年1月13日掲載
講師に下野正基氏を招聘
岡山県保険医協会ポストグラデュエートコース開催

まず「SRP時のセメント質削去はどこまでやるべきか?」の問いに対して解説。これまでは、セメント質を削去すると歯根吸収が起きる、セメント質は再生できない、露出セメント質のエンドトキシンの浸透は20~30μmと限局しているので、研磨や洗浄のみで充分である、と考えられていた。しかし、実際には、セメント質を削去したからといって歯根吸収は起きない、セメント質は再生する、研磨や洗浄だけでは不十分である、と下野氏は述べた。なぜ「感染の除去には研磨や洗浄のみで十分」という結論が流布しているのかいえば、Nyman、LindheらのJ Clin Priodontolの論文(1980)がその起源だという。その論文を元にLindheらの著書『CLINICAL PRIODONTOLOGY AND DENTISTRY』には「歯根が歯肉結合組織によって囲まれると吸収が起こる」と随所に記載があるのだが、抜去した歯根をイヌの歯槽骨と結合組織の間に埋伏した実験1例のみで結論を導いており、この実験では自家歯牙移植の実験になっていると指摘した。結論として、セメント質を除去しても感染がなければセメント質は再生する、エンドトキシンは無細胞セメント質には浸透しない、細胞性セメント質(歯頚部近くまで増生)には細胞突起を介してエンドトキシンが浸透し、セメント質の壊死を引き起こす、上皮性付着は結合組織性付着に置換する、これらのため、炎症治療の原則は原因の除去であるのでルートプレーニングは徹底的に行うべき、と解説した。
ほかにもペリオ14編、インプラント2編、エンド12編、ほか3編の臨床の疑問に対して解説した。