学会|2025年5月21日掲載
「活きる環境は栄養治療の原点」をテーマに
日本栄養治療学会首都圏支部、第16回支部学術集会を開催
さる5月17日(土)、ワークピア横浜(神奈川県)において、日本栄養治療学会首都圏支部第16回支部学術集会(石井良昌会長)が「活きる環境は栄養治療の原点」をテーマに開催され、事前登録約800名に対して、現地には600名以上が参集した。
冒頭、開会挨拶が行われ、石井良昌氏(日本大学松戸歯学部口腔外科学講座)が本学術集会のテーマについて言及。「栄養治療が効果を発揮するにはその土台となる衣食住環境が整っていてこそである」と述べ、空気・水・食・心・住そして歯科を交えた多様な視点から栄養を再考するという意図が説明された。
その後の管理栄養士セッション「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算における管理栄養士の役割」では、齋藤恵子氏(多摩小金井認定栄養ケア・ステーション)、古田 雅氏(東邦大学医療センター大森病院栄養部)が座長を務め、光永幸代氏(横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学)、齊藤大蔵氏(株式会社Nutrition Laboratory)、佐々木佳奈恵氏(日本赤十字社武蔵野赤十字病院医療技術部栄養課)、鈴木綾華氏(IMSグループ医療法人社団明芳会板橋中央総合病院)による講演が行われた(光永氏以外すべて管理栄養士)。
光永氏は、OHAT-Jをはじめとする口腔アセスメントツールについて解説し、栄養障害がみられる患者は栄養摂取経路あるいは口腔に問題を抱えている場合が多いことを述べ、口腔の問題に対してアプローチすることが栄養状態の改善に寄与することを詳解した。管理栄養士3氏は、令和6年度診療報酬改定において新設されたリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算を受けて、自身の勤務先で行っている取り組みや算定状況、課題について共有。栄養状態やADL(日常生活動作)に問題のある患者ほど多職種による介入が不可欠であり、栄養管理の必要性を強調した。
特別講演「『空気で答えを出す会社』ダイキンが考える空気の価値について」では、石井良昌氏が座長を務め、石井克典氏(ダイキン工業株式会社)が登壇。石井克典氏は、空調管理による快適な生活支援に加えて、エアロゾル感染予防や香りによる食欲の増進、最適な温度・湿度管理といった食事が美味しくなる技術研究について紹介し、暮らしを豊かにする空気の価値について興味深い取り組みが紹介された。
また午後の部の薬剤師セッションでは、摂食嚥下障害による嚥下困難は薬剤の投与方法にも慎重な検討が求められること、ならびに低栄養状態は薬剤投与による栄養素の吸収や排泄への影響によっても引き起こされることが述べられ、経腸投与は単なる栄養補給だけに留まらない薬物治療の一環として重要な役割を担うことが解説された。
なお、閉会挨拶の前には優秀演題賞表彰が行われ、小貫敬太氏(昭和大学薬学部臨床栄養代謝学)が受賞した。
その他、教育講演、口演、ランチョンセミナー、スイーツセミナー、看護師セッション、特別企画、ポスター発表などが展開された。企業ブースでは、とろみ付き飲料の試飲や高栄養食、嚥下食の展示などが行われ、参加者の関心を集めていた。上記の講演以外にもオーラルフレイルと低栄養の関係や栄養サポートチーム(NST)の介入による治療効果の向上・合併症リスクの低減、大規模災害による生活・食環境の変化がもたらす災害フレイルの提言など示唆に富む内容が披露された。
次回の第17回大会は、きたる2026年5月16日(土)、砂防会館(東京都)において上原秀一郎会長(日本大学医学部外科学系小児外科学分野主任教授)のもと開催予定である。