社会|2024年4月25日掲載

外部講師に谷口裕重氏を招聘

S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)、Webセミナーを開催

S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)、Webセミナーを開催

 さる4月16日(火)、S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会、中尾 祐会長)によるWebセミナーが開催され、歯科医療関係者を中心に40名以上が参加した。

 今回は外部講師として招聘された谷口裕重氏(朝日大歯学部口腔病態医療学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野教授)による特別講演「食べるにこだわる『摂食嚥下障害へのアプローチ』~基礎・解剖生理編~」が行われた。

 冒頭、谷口氏は摂食嚥下障害の病態が複雑になっていることについて問題提起。これまでは「摂食嚥下障害の裏には原因疾患が存在する」と考えられていたが、近年ではサルコペニアに起因する嚥下障害の割合が嚥下障害全体の約3割を占めるまで増加していると文献を紹介しながら解説した。加えて、ゼリーの飲み込みに苦慮している患者さんのVEを供覧するとともに、低栄養を評価する指標であるGLIM基準において、一定の評価水準に満たない患者さんの運動能力や口腔機能が著しく低下していることを説明。「摂食嚥下障害=喉に原因がある」と決めつけず、機能低下の要因を栄養状態や全身の所見から判断することで負のスパイラルを断ち切る重要性を訴えた。

 次に、嚥下のメカニズムからみる姿勢と摂食嚥下機能の関連性について詳説した。頭部後屈や円背の食事姿勢が正常な嚥下動作を妨げることを述べつつ、嚥下時に咽頭を引き上げる舌骨上筋群が重要な役割を果たすことを紹介した。あわせて、嚥下に課題があった患者さんに咀嚼のプロセスが入ることで嚥下が改善された例や、逆に義歯の不適合によって正常な咀嚼嚥下が妨げられているケースを挙げ、嚥下と咀嚼嚥下を混同して評価してはいけないことにも言及がなされた。また、咀嚼運動が中枢神経の伝達にかかわる仕組みとともに、咀嚼が認知機能の向上や小児の脳の発達にも寄与していることが付け加えられた。最後に、歯科医療や口腔管理、摂食嚥下リハビリテーションの先に「食」があることの大切さを強調した。

 講演後の質疑応答では、参加者が今回の講演について臨床の実態と差異を感じた疑問点が質問として寄せられ、谷口氏がていねいに回答。なかでも、胃ろうの脱却の是非についての質問には「口から食事がとれる見通しが立ったとしても、体調がすぐれない際には胃ろうの選択がとれる方が望ましい。十分な経過期間を設けて脱却は慎重に判断してほしい」とのアドバイスが送られた。また、谷口氏が実際に誤嚥する様子を豆乳やおにぎりをつかってデモンストレーションする場面も供覧され、嚥下の重要性が再確認された。

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