社会|2024年10月30日掲載

「このままで大丈夫!? 我が国の地域歯科医療」をテーマに

日本私立歯科大学協会、第15回歯科プレスセミナーを開催

日本私立歯科大学協会、第15回歯科プレスセミナーを開催

 さる10月29日(火)、アルカディア市ヶ谷(東京都)において、第15回歯科プレスセミナー(一般社団法人日本私立歯科大学協会主催、羽村 章会長)が「このままで大丈夫!? 我が国の地域歯科医療」をテーマに開催された。

 本セミナーは、マスメディアを対象に今後の歯科が担う役割の大きさや魅力について講演を行い、国民にそれらの情報を広く伝えることを目的として2010年より開催されているもの。第15回目を迎える今回は、恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構主任研究員)、岩井宏之氏(北海道開業、函館歯科医師会会長)、澄川裕之氏(島根県開業)、渋谷昌史氏(長崎県開業、長崎県歯科医師会会長)が講師として招聘された。

 冒頭、羽村氏(日歯大生命歯学部特任教授)による開会の挨拶の後、櫻井 孝専務理事(日本私立歯科大学協会専務理事、神歯大学長)より歯科医師、歯科医療機関ともに減少局面に入り始めたことや無歯科医地域の増加・拡大といった現状が共有された。

 次に、高橋英登氏(日本歯科医師会会長)によるビデオメッセージが上映された。高橋氏は、歯科医師過剰と叫ばれた2006年に国として歯科医師を削減する方針で舵が切られた時代から、近年では団塊世代の引退やなり手不足から歯科医師不足時代を迎えつつあることを強調。歯科医師の育成は十数年単位の時間を要することを主張し、若い人材が歯科医師を目指せる歯科界づくりに意欲を示した。

 続いて、恒石氏による基調講演「健康寿命延伸に影響する歯科医療提供体制の偏在問題について」が行われ、平均寿命と健康寿命の推移や主な死因といった医療分野と関連性の高い資料をはじめ、近年の歯科医療の動向として残存歯数と医療費の関係、口腔と全身疾患との関係などの研究データが共有された。あわせて、2022年の統計にて1982年からの40年間、右肩上がりに増加していた歯科医師数が初めて減少に転じたことを強調し、その要因には70代前半の開業医の減少(引退)と近年の勤務医の増加傾向を挙げた。また、将来の歯科医院継承において予定がない、もしくは候補者未定が約9割である状況に、今後も歯科医療提供を維持していくうえで多方面から検討する必要性を訴えた。

 その後は、櫻井氏がファシリテーター、岩井氏、澄川氏、渋谷氏がパネリストを務め、「地方における歯科医師および歯科医療の現状」「歯科医療ニーズの変化と地域歯科医療への影響」「これからの地域歯科医療~歯科医師の偏在を越えて」の3部構成、4名によるパネルトークが行われた。いずれも地方で開業している3氏は、北海道、島根県、長崎県それぞれ自身の開業地域の歯科医療提供の現状を解説。限られた歯科医師数で地域歯科医療を支えていることや、離島のアクセスの不便さ、訪問歯科診療の予約が1か月先というマンパワー不足の現状などが述べられた。そして、「開業場所は個人の自由意志に基づくものであるため、行政や県郡市区歯科医師会が歯科医師を雇用して公務員的な働き方をするような歯科医師も必要なのではないか」という今後の地域医療を守るための建設的な議論が展開された。

 そして最後は、パネリスト3名に恒石氏を交えた4名による質疑応答が行われ、歯科界の明るい未来に向けた有意義な意見交換がなされた。

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