学会|2025年7月15日掲載

「顎関節の未来に向かって―今、わかっていること、わかっていないこと―」をテーマに

一般社団法人日本顎関節学会、第38回総会・学術大会を開催

一般社団法人日本顎関節学会、第38回総会・学術大会を開催

 さる7月11日(金)から13日(日)の3日間、学術総合センター(東京都)において、第38回一般社団法人日本顎関節学会総会・学術大会(小宮山 道大会長・理事長)が「顎関節の未来に向かって―今、わかっていること、わかっていないこと―」をテーマに開催され、Web配信による参加登録も含めて750名以上が参集した。

 12日の開会式では、小宮山氏(日本大学松戸歯学部顎口腔機能補綴学講座)が本学会の良さとして「忌避のない活発な意見交換を行える学会」と述べるとともに本大会を、「若手会員の基礎的知識習得の一助とし、わかっていることそして新たな発想の共有の場としてほしい」との趣旨が説明された。

 引き続き行われたシンポジウム1「顎関節学会が認定する専門医に国民は何を期待しているのか?」では小宮山氏、栗田 浩氏(信州大学医学部歯科口腔外科)が座長を務め、今井 裕氏(一般社団法人日本歯科専門医機構理事長)、菅原志帆氏(厚生労働省歯科保健課)、栗田氏、西山 暁氏 (東京科学大学大学院医歯学総合研究科総合診療歯科学分野)が講演。

 なかでも今井氏の講演では、医歯一元制の時代から医・歯二元制への移行、歯科医学の確立と高度化、ひいては現代の専門医制度の確立にいたるまでの歴史が解説された。そして、「何をもって歯科の専門性と定め、その専門性を活かした社会貢献へつなげるのか」についての議論の必要性を強調した。栗田氏は、日本顎関節学会の認定医制度について概要を説明した後、「顎関節症における標準治療はおおむね地域を問わずに受けられるが、専門的な治療は専門医の偏在もあり地域によっては受診が困難である」と現状を整理した。

 また13日に行われたシンポジウム11「顎関節症における地域連携を考える」では、島田 淳氏、塚原宏泰氏(ともに東京都開業)が座長を務め、羽毛田 匡氏(東京都開業)、儀武啓幸氏(東京科学大学大学院医歯学総合研究科顎顔面外科学分野)、島田氏が講演。

 なかでも儀武氏の講演では、顎関節症を主訴とする患者の症状が改善しないことから、「高次医療機関に紹介すべきか、またどのようにして地域医療連携を行えば良いのか悩んでいる歯科医師が少なくない」と状況を述べた。そして、大学病院の口腔外科に紹介された症例を供覧するとともに「80~90%の患者は初期治療のやりなおしで症状が改善される。基礎的な治療については地域の歯科医院で検査・診断から初期治療までを行える環境整備が必要だろう」と総括し、かかりつけ診療所と高次医療機関とのスムーズな医療連携に向けたポイントが共有された。

 島田氏は、一般臨床科医からは「顎関節症の治療は難しい」と認識されている傾向にあることを述べ、その根底には一般歯科治療の対象は器質的疾患であるのに対して顎関節症は機能的疾患であることから「ほとんどのケースで器質的な問題とは関係なく生じるがために、適切な検査・診断がなされないまま治療が行われているのではないか」と分析。そして、平易な症例においては基本的な知識で検査・診断から初期治療まで対応できる体系立てたシステムを構築するとともに、対応に苦慮した際に相談できるコミュニティの必要性についても言及した。

 なお、11題組まれたシンポジウムのうち、6つが他団体との共催・後援によって開催され、顎関節に付随する領域からつながる連携や新たな価値の創造に期待高まる議論が各会場で展開されていた。

 次回の第39回大会は、きたる2026年7月10日(金)から12日(日)の3日間、JA長野県ビル(長野県)において、栗田大会長のもと「顎関節のすゝめ Re-skilling顎関節を学びなおす!顎関節のスキルを伸ばす!」をテーマに開催予定である。

関連する特集