大学|2025年7月14日掲載

中島一憲氏が「睡眠障害に対する歯科医療」をテーマに講演

東京歯科大学東京地域支部連合会、令和7年度学術講演会を開催

東京歯科大学東京地域支部連合会、令和7年度学術講演会を開催

 さる7月11日(金)、東京歯科大学東京地域支部連合会(中西國人会長)による令和7年度学術講演会が、東京歯科大学(東京都)の現地およびWeb配信のハイブリッド形式にて開催され、中島一憲氏(東京歯科大学口腔健康科学講座スポーツ歯学研究室)による「睡眠障害に対する歯科医療」をテーマとした講演が行われた。

 中島氏は冒頭、主な睡眠の役割について身体疲労の回復やストレスの緩和などを挙げ、睡眠障害は身体的・精神的健康に広く影響を及ぼす問題であり、その有病率は増加傾向にあることを示した。そして睡眠時無呼吸は閉塞型と中枢型の2種類が存在(混合型も存在する)し、著しく睡眠の質を低下させることに加えて血液中の酸素が欠乏することによって高血圧や心疾患、糖尿病、脳卒中といった全身疾患のリスクを大きく上昇させることを解説。その潜在患者は軽症者も含めて日本だけでも約2,000万人といわれており、睡眠障害に対する歯科の役割とともに、早期発見のための診断と継続的な管理の重要性を訴えた。

 次に、気道を閉塞させる要因として舌の沈下やアデノイド肥大、肥満などを挙げた後、複数のスクリーニング方法を紹介。簡易スクリーニングとしてセルフチェックが可能なエプワース眠気尺度と開口時の軟口蓋・口蓋垂の見え方から評価するマランパチスコアの有用性を説きながら、確定診断については医科の診断が必須であることを補足した。

 続いて、具体的な治療法について言及。持続陽圧呼吸療法(nasal Continuous Positive Airway Pressure:CPAP)が高い治療効果を見込める一方、その治療の煩雑さから長期間治療を継続することの困難さを指摘した。そこで、軽度から中等度の閉塞性睡眠時無呼吸において有用性が認められている口腔内装置(Oral Appliance:OA)の活用を提案。OAを装着することによって下顎を前方に押し上げ、気道を確保することでいびきや無呼吸を軽減するメカニズムから術前診査を含むOA治療の一連の流れを解説した。患者コンプライアンスの定期的な確認、そして適切な評価・装置の製作から装着後の調整、その後のフォローアップまで行うことによる長期治療の実現について、示唆に富む内容が披露された。

 講演全体をとおして、睡眠障害は単一の内科的な問題ではなく全身と口腔の健康を包括的にとらえる必要性が説かれ、歯科領域の視点から国民のQOL向上への期待の高さがうかがえた。

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