社会|2024年10月30日掲載
「業界トップランナーと100年時代のお口の未来を考える1日」をメインテーマに
(公財)ライオン歯科衛生研究所、財団設立60周年記念セミナー オーラル未来会議を開催
さる10月27日(日)、公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(濱 逸夫理事長)による「財団設立60周年記念セミナー オーラル未来会議」が、JPタワー ホール&カンファレンス(東京都)の現地およびWeb配信にて開催された。「業界トップランナーと100年時代のお口の未来を考える1日」をメインテーマに、歯科衛生士、歯科医師、看護師、栄養士、介護士など、オーラルケアに携わる関係者約900名が参加した。
濱理事長の開会挨拶後に、特別ディスカッション「各領域の最先端研究者が考える、100年時代の口腔と健康の在り方」が行われた。まず早野元詞氏(慶大特任講師)が、「老化のない未来は実現するか? 『老いない未来』を導くエイジング研究の最前線」の演題で講演した。血液から自分の生物学的年齢がわかる検査を例に、これからは自分の生物学的年齢を調べ、それに基づき受ける医療や摂取する食品を選択する社会が来ると予測。唾液など口腔由来の物質を採取しやすい歯科医院は、採取場所としての役割も担うようになると述べた。
続いて江草 宏氏(東北大教授)が、「人生100年時代の口腔と健康の在り方」の演題で講演。体の入口である口腔は、人が健康に生きるために重要な器官であることのほか、発症リスク予測に基づき先手を打つ先制医療や、組織の再生を促す再生医療、身体情報をリアルタイムで収集するウェアラブルデバイスの活用について現状を述べた。そしてそれらの講演をふまえ、西沢邦浩氏(株式会社サルタ・プレス代表取締役)と関根麻里氏(タレント)を交えてディスカッションを行った。「20年後の歯科医院の役割はどうなるか?」という質問に対しては、地域コミュニティの拠点となり、人々の社会の接点となりうるとの見解が示された。
その後の講演「最新研究に基づくフレイル予防」では、宮地元彦氏(早稲田大教授)が、フレイルとはどういう状態か、フレイルになっていないかのチェック方法、予防や改善のために何をすべきかを解説した。筋トレ、BMI、エネルギー摂取量、タンパク質摂取量、1日の歩数などとフレイルになりやすさの関係をグラフで示しつつ、「今より10分多く身体を動かす」のが予防のポイントだと締めくくった。
「各分野の専門家と考える、フレイル予防の新しいカタチ」では、赤石定典氏(東京慈恵会医科学附属病院)、糸田昌隆氏(大歯大教授)、宮地氏が登壇し、西沢氏の司会のもと、それぞれの観点――赤石氏は栄養、糸田氏は歯科、宮地氏は運動――から効果的なフレイル予防法を話し合った。高齢者は自分の噛める能力より低めのもの(最大限の咀嚼を要しないもの)を口にしがちのため、筋トレと同じく、少し負荷のかかる食品を選んで摂取するのが栄養的にも運動的にもフレイル予防に大切とされた。
セミナーの最後には、「みんなでお口の未来を話し合おう! ライオン歯科衛生研究所 お口の未来トーク」と題して、同研究所の歯科衛生士3名と西沢氏が、1日のまとめとなるディスカッションを行った。そのなかで、「一生涯を通じて予防歯科のゴールデンゾーンを歩み、口腔そして全身が健康な生活者を増やす」という財団の使命があらためて会場に告知された。
ほかにも、人工知能研究者の黒川伊保子氏による「科学的コミュニケーション」についての講演や、黒川氏に片山章子氏(Studio Chick代表)、亀井英彦氏(栃木県開業)を加えた「患者・歯科医師・歯科衛生士、全方位コミュニケーションのお悩み相談会」も行われた。