社会|2025年4月22日掲載

世界水準の軟組織マネジメントと補綴治療を学ぶ1日となる

THREEE. Perio & Prostho World Conference with SII開催

THREEE. Perio & Prostho World Conference with SII開催

 さる4月20日(日)、富士ソフトアキバプラザ(東京都)において、THREEE. Perio & Prostho World Conference with SIIが開催された。歯周治療と補綴をテーマに、世界基準の知識と技術を体系的に学ぶことを目的とした本カンファレンスには、Dr. Alfonso Gil(スペイン開業)を招聘。国内からは瀧野裕行氏(京都府開業)、中村茂人氏(東京都開業)が登壇した。大会長は、THREEE.の福場駿介氏(東京科学大学)とSIIの福居 希氏(奈良県開業)が務め、若手歯科医師や研修医を中心に100名を超える参加者が集まった。

 午前の部では、日本を代表する臨床家による、経験に裏打ちされた講演が行われた。最初に登壇した瀧野氏は、「Soft Tissue Management for Long-term Stability ~その審美は長期的維持が可能なのか~」と題し講演。天然歯とインプラントの共存、軟組織マネジメントのタイミング、臼歯部と前歯部で異なる対応など、日常臨床に直結する知見を症例とともに紹介した。また、自身の失敗症例を取り上げながら、「プロトコルを守れば成功する」「プレゼン力や特技、そして何より“パッション(熱意、誠意)”が大切」と語り、これからの歯科界を担う若手たちへ力強いメッセージを送った。

 続いて中村氏は、「硬・軟組織の治癒反応と補綴形態を考慮した審美領域インプラント修復」と題して講演。血餅の形成と保持が審美性、安定性に与える影響を軸に、抜歯即時埋入後の骨造成、結合組織移植術(CTG)、アバットメント形態の工夫について多角的に解説した。補綴設計の細部にまで目を向け、軟組織への圧力やオーバーロードの影響についてもていねいに示した。

 午後の部では、スペイン・ビルバオで開業し、米国で歯周病・インプラント専門医、スイスで補綴専門医プログラムを修了したDr. Gilが、国際的な視座からインプラント周囲の軟組織マネジメントと補綴マテリアルについて講演。2部構成で、計4時間にわたる濃密なセッションが行われた。

 Part.1「Strategic Management of Peri-Implant Soft Tissue Deficiencies:Timing, Techniques, Predictability」では、軟組織マネジメントのタイミングを5段階に分類し、「できるだけ早期の対応こそが予知性と長期安定性のカギ」と強調。侵襲性、難易度、エビデンスの3点から、各タイミングのリスク評価も論理的に提示された。症例紹介では、すでに併発症を抱えた患者への対応例も多数紹介され、実践的なアプローチに多くの参加者が見入っていた。

 Part.2「Selection Criteria for Restorative Material in Tooth-Supported Restorations」では、補綴マテリアルの選定における論理的判断と患者要因の考慮が成功のカギであるとし、マテリアルの透過性、機械的特性、残存歯質の量、支台歯の明度など複数の要素を組み合わせ、どの素材が適切かを複数の症例で検討。補綴治療の質を高める“考える力”の重要性が、印象的に語られた。

 講演後には、登壇者3名による総合ディスカッションが行われた。進行は、THREEE.代表の小川雄大氏(静岡県勤務、東京都開業)と河阪幸宏氏(東北大学)が担当。臨床現場での判断や迷いについて率直な意見が交わされ、参加者の理解と熱気をさらに高める時間となった。

 最後には、登壇者全員にTHREEE. のユニフォームが贈呈され、Dr. Gilには「根面被覆術」と書かれた扇子が手渡されるという粋な演出もあり、充実した講演と温かな交流が印象に残る1日となった。

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