学会|2025年10月20日掲載
「がんと生きる、がんを生きる」をテーマに
第63回日本癌治療学会学術集会が盛大に開催

さる10月16日(木)から18日(土)の3日間、パシフィコ横浜会(神奈川県)において、第63回日本癌治療学会学術集会(吉野孝之理事長・万代昌紀大会長)が、「がんと生きる、がんを生きる」をテーマに開催された。
領域横断シンポジウム「がん治療における口腔関連有害事象と予防ケア」は、がん治療における周術期口腔機能管理の重要性が認識され、2012年に保険収載されて以降、その必要性が高まっていることをふまえて開催された。
最初に岸本裕充氏(兵庫医科大学医学部歯科口腔外科学講座)から、がん患者でも投与される骨吸収抑制薬に起因する顎骨壊死の予防を例に、単なる口腔清掃だけでなく、歯科として正確な評価と診断に基づき、リスクの高い歯は抜歯するなど、歯科治療として適切な口腔管理を行うことの重要性を指摘した。
続いて釘本琢磨氏(東京科学大学大学院医歯学総合研究科顎口腔腫瘍外科学分野)が、がん治療にともなって生じる有害事象に対する自施設での口腔ケアの取り組みを紹介し、単なる補完的介入を超えた、がん統合ケアとしての口腔管理の意義を述べた。
野村武史氏(東京歯科大学口腔腫瘍外科学講座)は、がん患者の口腔管理を行う機会の増加によって口腔カンジダ症の治療を行う機会も増えたことをふまえて、口腔清掃だけでは対応できない本疾患において、予防のためのがん治療前からの口腔管理の重要性や発症した場合の投薬治療などについて解説し、がん治療にともなう口腔関連の有害事象としてつねに口腔カンジダ症を意識する必要があると強調した。
最後に、上田倫弘氏(独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター口腔腫瘍外科)が、がん治療が進歩し生存率が向上したことにともない、がん患者のQOLを保つことの意義が増しているなかで口腔ケアの重要性も高まっていることを強調。さらに高齢がん患者の増加により、オーラルフレイル対策も不可欠とし、がん治療における全体的な回復力と機能を維持するための重要な要素として、単なるケアではなく、がん治療の経過全体を通して口腔のヘルスケアとしてしっかりと位置づける必要があると訴えた。
「舌がんステージ4から希望のステージへ」と題して行われた特別講演では、タレントの堀ちえみ氏が登壇。2019年に切除手術を行った舌がん患者の立場から、告知されたときの心境や家族の支え、術後のリハビリ中の医師からの励まし言葉の重みやメンタル面でのサポートの重要性などを紹介。“がんは治る病気”として自身の姿が他の患者さんの社会復帰への支援につながればとの想いを語るとともに、会場のがん治療に携わる医療従事者に向けての感謝と、これからも患者さんのために力をつくしほしいとのメッセージを述べた。