学会|2025年10月15日掲載

「包括歯科臨床における真髄」をテーマに

第13回日本包括歯科臨床学会学術大会・総会開催

第13回日本包括歯科臨床学会学術大会・総会開催

 さる10月11日(土)、12日(日)の両日、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)において、第13回日本包括歯科臨床学会学術大会・総会(川口 敦大会長、倉田 豊会長)が開催され、約300名が参集した。

 故・筒井昌秀氏(同学会名誉顧問)と筒井照子氏(同学会顧問)のコンセプトである「包括歯科臨床」とは、「炎症のコントロールと力のコントロール」を柱に、炎症と力の確実な診断およびコントロール、咬合の5大禁忌(バーティカルディメンションを低くすること、上顎・下顎を後方に押し込むこと、歯列を狭窄させること、顎関節に負荷をかけること、歯列・歯牙単位ではまり込むこと)の回避、ナラティブとエビデンスのいずれも重要視する患者本位の歯科医療と長期安定を重要視する歯科臨床を実践するものである。

 本学術大会では、講演「包括歯科臨床の真髄」のほか、「小児矯正・咬合育成」「歯周病治療」「歯内療法」「審美歯科治療」「インプラント治療」「咬合再構成治療」「顎咬合機能障害治療」「コデンタル」「技工士」の各セッションがプログラムされたが、いずれの講演も前述のフィロソフィーを基礎としている。また、筒井祐介氏(福岡県開業)が講演「包括歯科臨床の真髄1」中に「本学会は、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、歯科助手やその他のスタッフが同じものを勉強し、患者さんと治療にあたるための共通のプラットフォーム」と述べたように、他職種連携し患者と治療に取り組み、結果を維持していく知見を得る会となっている。

 このうち「小児矯正・咬合育成セッション」では大八木孝昌氏(神奈川県開業)、川口 敦氏(東京都開業)、筒井武男氏(福岡県勤務)が登壇し、咬合育成、態癖の是正、歯列・顎関節機能・全身の発育支援としての小児歯科・矯正歯科について語った。また「歯周病治療セッション」では瀬戸泰介氏、江上 圭氏(いずれも福岡県開業)、亀山秀和氏(鹿児島県開業)が登壇し、口腔機能維持を目的とした低侵襲な歯周再生療法について講演した。演者らは、さまざまな方法の中からどのような理由で何を選択し、実際に手術をどのように行い、予後がどう経過していったかそれぞれの症例から詳細に述べた。

 さらに「インプラント治療セッション」では、藤田 亨氏(大阪府開業)、古家 豊氏(歯科技工士、株式会社カロス)が包括歯科臨床に基づくインプラント治療および歯科医師・歯科技工士の協働について講演したほか、本学会と提携関係にある台湾歯列再生研究学会から曾 吉杉(Chi-Shan, Tseng)氏が登壇し、国際的な学術交流を深めた。歯科医師・歯科技工士の協働については、「審美歯科治療セッション」でも筒井祐介氏、増田長次郎氏(歯科技工士、株式会社カロス)が「フェイススキャナーを使用した前歯部修復治療」と題して講演した。

 最後に「包括歯科臨床の真髄2」として筒井照子氏と秋元秀俊氏(編集者、生活の医療社)が登壇し、筒井氏が手掛けた初診後40年経過症例について筒井氏が歯科医療側としての視点を、秋元氏が1988年にザ・クインテッセンス誌(小社刊)上で行った同症例患者のインタビュー企画からナラティブな患者視点を提示した。本学会の会員がさまざまな歯科分野を専門としながらも目指す、筒井氏が50年間行ってきた包括歯科臨床のまさに真髄が示されたセッションに、参加者は惜しみのない拍手を送っていた。

 次回は、きたる2026年10月10日(土)、11日(日)の両日、パピヨン24ガスホール(福岡県)において開催予定である。

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