歯科とIoTで予防医療の普及を目指す臨床家

2021年2月号掲載

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2021年2月号掲載

歯科とIoTで予防医療の普及を目指す臨床家

歯科医療を通じて予防医療をアップデートしたい

 歯科医師・竹山 旭氏(大阪府開業)は、株式会社NOVENINE代表取締役と歯科医院院長の二足の草鞋を履く新進気鋭の臨床家であり企業家だ。氏はこの2つの働き方を分けて説明する必要がないと語る。その理由は「会社の事業そのものが予防医学の一次予防そのものだから」と。「口腔に愛を。」を掲げる氏の熱い想いをうかがった。

竹山:「歯科医療を通じて、予防医療をアップデートする」がNOVENINE(以下、当社)のミッションです。

 歯科の2大疾患であるう蝕と歯周病は、定期的なメインテナンスによって予防できることが明らかになっています。このことは、歯科医療従事者の皆さんは周知の事実です。にもかかわらず多くの国民は、「痛くなって」から歯科医院を受診するという文化がまだまだありますので、歯科としては一次予防(セルフケア)のさらなる周知と、二次予防(早期発見・治療)との差を縮めるための予防歯科が重要だと思っています。

 そこで、当社として歯科の課題を解決するための対象を、①生活者の知識・歯科医師の意識、②経済的制約、③歯科医院の経営環境――の3つに絞りました。私は歯科医師として、起業してこれらの課題を事業化して解決に取り組む方が、即効性があると確信したわけです。

 それらの課題を解決するために開発したソリューションが世界初の口臭を測定するIoT歯ブラシ「SMASH」です。この電動歯ブラシは、呼気中に含まれる口臭ガスを速やかに測定することができます。電動歯ブラシと一体になっているため、口臭ガス測定のためだけに別の機器を準備する必要はなく、日々の歯磨きを行う習慣の中に口臭ガス測定を取り入れることができます。つまり、口臭ガス測定によって口腔内状態を「オーラルスコア」(スマホアプリと連動)として可視化し、適切なケアサポートを提供することができます。また、地方自治体と生命保険会社といった官民が一体となり、100台以上の「SMASH」を活用した口腔内を可視化する実証実験がきたる3月を目途にスタートする予定です。多くの人の手に「SMASH」が行きわたることで、データプラットフォームとしても価値を創出し、さらなるソリューションとして還元していきたいと考えています。さらには今後、予防医療を提供する連携歯科医院のネットワークの構築も予定しています。

 当社のミッションを「予防医療」としたわけは、予防歯科を実践することで全身疾患の予防にもつながり、意識をもって日々の口腔ケア(セルフケア)を実践することで、自身の身体のメインテナンスに関して自覚をもてるようになり、結果的に生活習慣病予防にも確実につながると思っているからです。

 これらのサービスをとおして当社のミッションである「歯科医療を通じて、予防医療をアップデートする」を実践することで、だれもが歯や口の悩みから解放され、自由な人生を創出できる未来をつくっていきたいと考えています。