2025年12月号掲載
新理事長に就任した 日本歯科医学会連合の「顔」
※本記事は、「新聞クイント 2025年12月号」より抜粋して掲載。
国民と社会、そして大学のために学会連合を発展させたい
歯科の専門学術団体46学会から構成される連合組織の一般社団法人日本歯科医学会連合。本年7月、初となる選挙で第2代理事長に就任した安井利一氏(明海大学名誉教授)は、社会に求められる学術団体の存在意義をさらに高めるべく、どのような戦略のもとでリーダーシップを発揮するのだろうか。本欄では数々の要職を務めてきた氏に、今後の学会連合のビジョンと展開についてうかがった。
安井:2016 年に発足した一般社団法人日本歯科医学会連合(以下、学会連合)は、日本歯科医師会の内部組織である日本歯科医学会(小林隆太郎会長)と連携して事業を進めていくことに変わりはありません。学術団体としての活動の目的は同軸上ですが、法人格を有する学会連合の活動の向かう先は、より国民であり、より国内・国際社会であり、そして大学であり、企業などです。この点を会員が認識し、明確にしておくことが協調の強化につながると考えています。もちろん、日本医学会連合をはじめ他の医療関係団体との連携も不可欠です。
学会連合として、国民への歯科医学や歯科医療、歯科保健などの啓発は、われわれに課せられた重要な課題です。学会からの国民や社会への情報発信に尽力し、メディアをとおして歯科界の魅力を社会・国民に発信したいと考えています。
そして学会の先生方が、基礎系、臨床系、社会系などで十分な研究と成果の発信、そして社会実装を果たすための所属機関である大学の安定性は、重要基盤の1つであると思っています。学会活動が社会活性化の源であるという認識をもってもらうためにも、研究母体である大学との協働、研究所や研究組織との連携を図り、そしてそれらの組織の発展のために尽力したいと考えています。
また、日本歯科医学会の専門・認定分科会以外の小規模な学会やスタディグループ、あるいは企業研究所などとも意思疎通の場を提供することで研究団体の組織化を図り、歯科界全体として社会に責任のもてる歯科医学の発展を目指したいと思っています。
たとえば、美容外科やCST(カダバー・サージカル・トレーニング)などの問題が取り上げられたように、医療倫理に反する不適切な行為など医療者としての責任ある行動はもとより、情報提供や研修を実施することも大切な機能と考えています。
そして、事業計画目標を達成させるべく、財政措置を含めた効率的な運営のために活動計画と財務計画を整合させ、中期計画を策定して収支の改善にも力を入れていきたいと思います。
「学会の力を国民と社会のために、そして大学発展のために」を学会連合の運営方針として理事会で共有し、住友雅人前理事長が創設され基盤をつくられた学会連合をより良い方向に導き、さらに発展させていく所存です。