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2016年6月18日

日本老年歯科医学会第27回総会・学術集会開催

「口腔から超高齢社会の明るい未来を切り開く―口腔が果たす役割の再確認と啓発―」をテーマに

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 さる6月18日(土)、19日(日)の両日、アスティとくしま(徳島県)において、日本老年歯科医学会第27回総会・学術集会(市川哲雄大会長、櫻井 薫理事長)が「口腔から超高齢社会の明るい未来を切り開く―口腔が果たす役割の再確認と啓発―」をテーマに掲げ、開催された。少子高齢化に伴い、要介護高齢者の増加を始めとしてさまざまな問題が指摘されているが、多くの高齢者の問題を解決する手段の切り札は口腔からのアプローチであるとの考えから、特別講演、シンポジウム、各種セミナー、など多彩なプログラムが組まれた。

 まず1日目の第一会場では、開会式に続いて椿原彰夫氏(川崎医療福祉大学長)による特別講演「摂食嚥下の機能と障害」が櫻井 薫氏(東歯大)の座長のもと行われ、Process Modelで考える摂食嚥下のメカニズムやその障害の特性について解説された。続いてのシンポジウム1「口腔機能と全身機能低下、フレイルとの関係を考える」では、水口俊介氏(医歯大教授)の座長のもと、平野浩彦氏(東京都健康長寿医療センター)、渡邊 裕氏(同センター)、菊谷 武氏(日歯大口腔リハビリテーション多摩クリニック院長)、松尾浩一郎氏(藤田保健衛生大教授)、が登壇し、昨今、介護予防の観点から注目されつつもいまだ定義が明確となっていない「オーラルフレイル」「口腔機能低下」の概念を整理しつつその対策について議論を深めた。なお、「高齢期における口腔機能低下」に関する学会見解論文が近日中を目処に発表予定であり、またポジションペーパーの作成にも着手しているとのこと。

 また、午後に行われたシンポジウム2「認知症高齢者の意思決定支援に関するエビデンスを考える」では市川氏(徳島大教授)が座長を務め、今後激増が予想されている認知症高齢者の医療・介護サービスに関する意思決定の支援について、園田 茂氏(藤田保健衛生大七栗記念病院院長)、杉澤秀博氏(桜美林大教授)、白山靖彦氏(徳島大教授)、服部佳功氏(東北大教授)、枝広あやこ氏(東京都健康長寿医療センター)が登壇し、それぞれの専門からの見解を示した。日本老年歯科医学会は「認知症患者の歯科的対応および歯科治療のあり方:学会の立場表明」を昨年公表しているが、認知症患者の歯科治療に関する臨床ガイドラインの作成にも取り組んでいるとのこと。

 その他にも、歯科衛生士シンポジウム「老年歯周病学の確立を目指して」、入門セミナー「医療従事者のための社会福祉学入門」「口腔機能を診る1~咀嚼能力~」「口腔機能を診る2~舌および周辺能力~」ハンズオンセミナー「口腔管理の実際1~専門的口腔ケアの標準化~」等が行われた。

 2日目には、「認知症高齢者の摂食嚥下機能をいかに評価するか?」「未来老年歯科の白熱教室」と題した若手によるミニシンポジウムが2題、教育講演「高齢者の栄養」、特別企画「豊かな超高齢社会のシステム作り:日本老年歯科医学会に期待すること」「高齢者が生き生き生活するために」、日・台老年歯科医学会合同シンポジウム「高齢者の食べる機能と認知症を考える」など多数の講演が行われた。日本老年歯科医学会在宅歯科診療等検討委員会によるハンズオンセミナー2「口腔管理の実際2~口腔咽頭吸引の理論と実際~」では、看護師による気道確保のための鼻腔からの吸引とは異なる、『口腔管理の一環』として行われる口腔咽頭吸引の理論とその術式が紹介され、高齢者の口腔内を再現したシミュレーターを使用し参加者が実際に術式を試す場面もあった。

 両日とも常時立ち見がでるほどの盛況ぶりで、成功裏に終会となった。