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2018年1月25日

第36回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会開催

「口腔がん診療をささえる-診断・治療・支持療法-」をテーマに

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 さる1月25日(木)26日(金)の両日、新潟グランドホテル(新潟県)において、第36回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会(林 孝文大会長、桐田忠昭理事長)が、「口腔がん診療をささえる-診断・治療・支持療法-」をテーマに開催された。2日間にわたり、シンポジウム3題、ワークショップ4題、ビデオセッション2題、教育講演2題、招聘講演、特別講演のほか、一般口演やポスター発表、学術セミナーなどを交え、濃密なプログラムが展開された。

 「シンポジウム1 周術期口腔機能管理(がん口腔支持療法)のこれから」では、都道府県がん診療連携拠点病院の取り組みとして、「がんセンター系歯科の立場から」と題して秦 浩信氏(北海道がんセンター歯科口腔外科)、「大学病院(教育機関)歯科の立場から」と題して曽我賢彦氏(岡山大学病院医療支援歯科治療部部長)が登壇。
 秦氏は、病院内各科との連携、入院中当科受診患者を退院後に地域歯科医院につなぐ後連携の取り組みに加え、各科がん治療医の依頼のもとに直接地元歯科医院にて、より早期の口腔スクリーニングを可能とする「前連携」のシステム構築に至り、昨年4月から本格運用に至った経緯を紹介した。
 曽我氏は、大学での学部教育や歯科医師臨床研修においてがん口腔支持療法の担い手を育成する実習や研修プログラムを開始し、参加者の期待度と満足度の高さを紹介しながら、がん口腔支持療法を担い、全身の健康に寄与する歯科医療人育成の重要性を強調した。
 最後に「県指定がん診療連携拠点病院(地域中核病院)歯科の立場から」と題して東森秀年氏(呉共済病院歯科口腔外科部長)が講演。地域歯科医院との連携における情報提供書の作成を医師事務作業補助者(MA)の協力によりスムーズに行えるようになったこと、ARONJ予防ネットワークの構築による歯科から医科への骨粗鬆症スクリーニングによる情報提供等の取り組みにより、地域全体での連携の機運が高まっていることなどを紹介し、周術期口腔機能管理のさらなる推進への期待を語った。

 「シンポジウム2 口腔癌に対する免疫チェックポイント阻害剤投与の実際と腫瘍内科医との連携」では、最初に桐田忠昭氏(奈良県立医大教授)が「ニボルマブの最適使用推進ガイドラインと腫瘍内科医との連携」と題し、昨年3月より再発・転移頭頸部がんでも承認された免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、施設基準や医療従事者の規定などガイドラインの概要や、口腔外科医と腫瘍内科医との緊密な連携の必要性を解説した。
 つぎに上田倫弘氏(北海道がんセンター口腔腫瘍外科医長)が「口腔癌に対する免疫療法 -腫瘍内科との連携-」と題し、ニボルマブではこれまで経験したことがない有害事象の報告もあり、腫瘍内科をはじめ関係各科との連携が不可欠であることから、実際の症例をもとに、取り組みの実際や今後の課題等について述べた。
 続いて清田尚臣氏(神戸大特命准教授)が「頭頸部がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と頭頸部がん薬物療法診療連携プログラムについて」と題し、腫瘍内科医の立場から、ニボルマブの基本的な薬理作用や、学会間連携による頭頸部がん薬物連携診療連携プログラムを紹介し、医科歯科連携体制構築の重要性を訴えた。

 両日にわたり「舌半側切除術」「下顎辺縁切除術」の各テーマで開催されたビデオセッションでは、それぞれ3名ずつの演者から各施設における手術の実際が動画で供覧され、ホールいっぱいに詰めかけた聴衆の注目を集めていた。

 寒波に見舞われた両日であったが、全国から約650名もの多数の参加者が集まり、会場は熱気に満ちあふれていた。がん患者に対する口腔ケア、医科歯科連携による対応、周術期口腔機能管理のさらなる推進等が見込まれるなか、今後も本学会の主体的な取り組みが期待される。