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2018年8月19日

多職種連携における自立支援歯科学講演会開催

自立支援における歯科の役割に注目が集まる

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 さる8月19日(日)、福岡県歯科医師会館(福岡県)において、「多職種連携における自立支援歯科学講演会~多職種連携で自立支援を目指そう!~」(前歯でも噛める入れ歯研究会主催、南 清和大会長)が開催され、歯科医療従事者を中心に要介護高齢者を支える専門職など317名の参加者で盛会となった。自立支援歯科とは、咀嚼を中心とした口腔機能全般を保持・回復させるために歯科が介入し支援していくことであり、自立支援歯科学とは、咀嚼摂食機能の回復(活性化)によって全身の活動力回復をもたらすことを追究する学問を指す。

 午前の部では、南 清和大会長(大阪府開業)による趣旨説明の後、自立支援介護領域の第一人者である竹内孝仁氏(日本自立支援介護・パワーリハ学会会長、国際医療福祉大学大学院教授)による基調講演1「自立支援歯科学の提案」が行われた。竹内氏は、自身が提唱する自立支援介護の基本ケアである「水分摂取、栄養、排便、運動」の重要性に着目し、とくに栄養に関してはしっかり咀嚼することで食塊が形成され、嚥下につながることから、もっとも安全な食事は「常食」と強調。竹内氏が歯科に注目するきっかけともなった河原英雄氏(大分県開業)の義歯調整システムによって、口から食べることで自立性が向上した事例など動画も交えながら解説し、会場を魅了した。

 その後、大里めぐみ氏(介護福祉士・山郷館くろいし)、保坂早紀氏(介護福祉士・ウェルケアガーデン深沢)による介護現場からの報告では、事例発表を通して摂食嚥下障害を“咀嚼・食塊形成障害”として捉えてケアを行い、常食化を目指す取り組みなどが紹介された。また、竹邉千恵美氏(歯科衛生士・日本歯科衛生士会監事)、古賀智也(歯科技工士・デントラボ)による歯科医療従事者の視点から、臨床現場での取り組みや、とくに咀嚼機能の回復の鍵を握る義歯調整など、歯科の果たすべき役割について熱の入った発表が展開された。

 午後の部では、リハビリテーション病院などにおける歯科の取り組みとして、衛藤恵美氏(歯科衛生士・大分リハビリテーション病院)、大石佳奈氏(歯科衛生士・長崎リハビリテーション病院)、高森祐介氏(高森歯科医院)による医療・介護の現場で食べることを多職種で支える事例が多数報告された。また、長田耕一郎氏(金隈病院)、副島隆太氏(長崎県開業)、西田哲也氏(宮崎県開業)による会員発表が行われ、義歯調整によって口腔機能が向上し食事形態が変化した発表の他、南氏による講演「オーラルフレイル時代における自立支援歯科学の重要性」が行われ、いずれも示唆に富んだ内容となり好評を博した。

 最後に、再び竹内氏による基調講演2「口から普通食を食べてもらうケアとその理論(経口常食化理論)」が行われ、自立支援における歯科が果たす役割の重要性を強くアピールする姿に、参加者は熱心に耳を傾けていた。

 なお、南大会長より、きたる2019年6月23日(日)、第37回日本顎咬合学会学術大会(上田秀朗理事長)において、今回の内容に関連する著名な講師を招聘した市民フォーラムが開催されることが発表された。