Quint Dental Gate 歯科のコミュニケーションサイト

文字サイズ
標準
特大

トピックス


2020年1月9日

深井保健科学研究所、グローバルセミナーを開催

「UHCと口腔保健」をテーマに

ログインされますと、関連書籍が表示されます。
会員でない方はこちら
(※関連書籍がないトピックスは表示されません)

 さる1月9日(木)、アルカディア市ヶ谷(東京都)において、深井保健科学研究所(深井穫博所長)主催によるグローバルセミナーが「UHCと口腔保健」をテーマに開催された。今回は、WHOの口腔保健プログラムのテクニカルオフィサーとして、現在コンゴ共和国で勤務している牧野由佳氏(WHOアフリカ地域事務所慢性疾患部署)が講師として招聘された。

 まず牧野氏は、口腔を含めた国際保健の潮流について整理。2000年の「ミレニアム開発目標(MDGs)」は特に途上国で直面する問題を解決するための目標であったが、それに加えて、先進国が抱える新たな課題なども含まれた包括的な目標として、2015年に「持続可能な開発目標(SDGs)」が新たに掲げられたこと、SDGsでは、すべての人が基礎的保健サービスを必要な時に負担可能な費用で享受できるという「UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)」を目指していることが強調された。また、2019年9月に国連で行われたUHCハイレベルミーティングにおける政治宣言に口腔保健(oral health)の文言が盛り込まれたことにも着目し、こうした動きによってWHOなどで口腔保健に対する取り組みが実施されやすくなる可能性を示唆した。

 さらに、近年では「Lancet」において初めて口腔保健の特集が取り上げられるなど注目が集まっているが、世界的にう蝕や歯周病などの疾患は非常に多く、その対応はけっして十分とはいえない。そのため、口腔保健を世界的に推進していくには、費用対効果の高い介入方法を整理すること、各国のニーズに合った口腔保健にかかわる人材を育成すること、よりわかりやすく口腔保健の効果を評価する指標を設けることなどが必要であると提言された。特に、人材育成に関しては、プライマリーケアのほうが圧倒的にニーズが高いにもかかわらず、現状はまったく追いついていないことが示され、参加者の関心を集めた。

 最後に、日本に期待されることとして、質の高いエビデンスの創出、これまでの政策を評価してその経験を他国へシェアすること、口腔保健の優先度を高めるため、各国や組織、機関などへの政治的な支援が挙げられた。

 講演後に行われた質疑応答では、牧野氏のアフリカにおける日常業務が紹介されたり、参加者同士の議論が活発に交わされたりするなど、終始活況を呈した。