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2021年11月12日

日本口腔外科学会、第66回総会・学術大会を開催

「口腔外科学の現在までの進歩・未来の進歩を考える」をテーマに

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 さる11月12日(金)から14日(日)の3日間、幕張メッセ国際会議場(千葉県)において、第66回公益社団法人日本口腔外科学会総会・学術大会(原田浩之大会長、桐田忠昭理事長)が、新型コロナウイルス感染症の影響により、現地とWeb配信を融合したハイブリッド形式にて開催された。プログラムは、特別講演2題、教育講演1題、海外招聘講演2題、関連学会理事長講演1題、シンポジウム12題、合同シンポジウム3題、ミニレクチャー42題、ビデオレクチャー12題、その他オンデマンド配信による一般口演、ポスター発表など、多彩なメニューが繰り広げられた。

 「シンポジウム 外来口腔外科手術」では、最初に鈴木豊典氏(麻生北見病院歯科口腔外科)が「水平歯根破折歯の治療」と題した講演で、小児から高齢者まで水平歯根破折歯の保存治療を行った8症例を供覧。現状、水平歯根破折歯に対する処置として抜歯が選択される状況にあるが、口腔顎顔面外傷治療の最前線に立つ口腔外科医として、まずは保存を試みるべきと強調した。

 つぎに柴戸和夏穂氏(福岡県勤務)が「重度歯周炎に罹患した歯に対する EMD を応用した歯周組織再生療法について」と題し、20年以上にわたり世界中で高い成果を上げてきたエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)による歯周組織再生療法について講演。自院での症例をまじえながら、安全・確実で、患者にやさしく、長期保存に貢献し、エビデンスも蓄積された高い有効性を示す治療法であると説明。人生100年時代において自分の歯で噛めることは大変重要であり、天然歯の保存に寄与するEMD治療の意義を語った。

 続いて芳澤享子氏(松本歯科大教授)は「歯の移植の可能性と限界」と題した講演で、自身らの研究から歯根完成歯移植における喪失の主な原因としてドナー歯と受容部のサイズ不適合による創傷治癒不良、ドナー歯の歯根形態異常や疾患の既往による歯根吸収であったことを報告し、適応症を適切に判断することの重要性を述べた。

 秦 浩信氏(北海道がんセンター歯科口腔外科)は「ラヌーラの一次治療」と題し、開窓術や微小開窓術が適応される舌下型のラヌーラ(粘液貯留嚢胞)におけるOK-432(ピシバニール)注入療法について、自身の施設で同法を2回実施し治癒した症例を提示。単純で短時間で済む低侵襲な手技である本法も選択肢のひとつとして普及されるよう、ラヌーラの一次治療の標準化に向けた議論の必要性を訴えた。

最後に岸本裕充氏(兵庫医科大教授)が「外来での口腔外科手術における抗菌薬の適正使用」との演題で、術後感染を予防する目的で抗菌薬を投与する場合はアモキシシリンが第一選択であり、手術直前1時間以内からの投与が望ましく、耐性菌の影響を考慮し、術後は最長48時間まで、また手術の3日前からの投与というような投与は厳に慎むことと解説した。

 特別講演「COVID-19のこれまで、そしてこれから」では、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長である尾身 茂氏(地域医療機能推進機構理事長)がリモートにより登壇。COVID-19は2003年流行のSARSと異なり、症状がない段階でも感染させることから、当初より対応の困難さが想定されていたと振り返り、3密回避という言葉を生んだクラスター対策、国民的な議論を招いたPCR検査実施についての考え方、都市部で流行するという特性をふまえ夜間の滞留人口に着目した対応など、データをまじえながら、これまでの取り組みや成果を紹介した。現在なぜ急減したのかについては定量的にサイエンティフィックに説明することは不可能であるが、一般的な感染対策の強化や日本人の健康意識の高さと行動に加え、ワクチン接種の一定程度の寄与などを指摘した。今後はワクチン接種の進展や薬も開発されてきたなかで、新規感染者数だけを見るのではなく、医療の逼迫を起こさない程度を保ちながら、経済、教育、生活を戻していく新しいフェーズとしての対策の方向性を示唆した。

 昨年に続いてのハイブリッド開催となったが、合計で過去最高の5,150名もの大多数が参加登録し、関係者の意欲の高さがうかがわれた。なお、オンデマンド配信は引き続き12月14日(火)まで、ライブ録画アーカイブ配信は11月26日(金)から12月14日(火)まで行われる。次回大会は、きたる2022年11月4日(金)から6日(日)に今年と同じ幕張メッセ(千葉県)で開催予定である。