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2022年2月12日

第45回北九州歯学研究会発表会、ハイブリッド形式にて開催

「『原点回帰』~振り返ろう!歯科治療の基本~」をテーマに

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 さる2月12日(土)、13日(日)の両日、第45回北九州歯学研究会発表会(上田秀朗会長)が「『原点回帰』~振り返ろう!歯科治療の基本~」をテーマに掲げ、JR九州ホール(福岡県)およびWeb配信のハイブリッド形式で開催された。

 まず開会の辞に上田会長(福岡県開業)が登壇した後、上野道生氏、倉富 覚、氏(ともに福岡県開業)により「下川公一先生追悼講演」が行われた。両氏ともに、下川氏の生前の功績、下川氏との出会いやこれまで学んできたことについて、涙で言葉を詰まらせながらその思いを語った。

 シンポジウム1の歯内療法では「診断なくして治療なし~診断学、病理組織学をベースにした『狙って治す』歯内療法~」をテーマに、プランナーとして倉富氏、津覇雄三氏、発表者として青木隆宜氏、竹中 崇氏、松木良介氏、木村英生氏(すべて福岡県開業)、河島紘太郎氏(広島県開業)が登壇した。

 まず、竹中氏、河島氏が「根拠がないまま治療を行い、ただ結果が良かった」では意味がなく、診断をしっかりと行い「狙って治す」という下川氏の教えに忠実に従い、デンタルエックス線写真における正常像を理解すること、経過観察を正確に行うために規格性を揃えることの重要性について解説された。その後、青木氏、津覇氏から、直接覆髄法、間接覆髄法(AIPC)について語られ、どちらで行うのが正しいということではなく、そのどちらも治療の選択肢としてもちながら、状況によって使い分けることが重要であると話した。その他にも、根管充填の終末位、髄腔開拡、穿孔、歯髄再生についての講演が行われた。最後に木村氏が、複数の長期経過症例を供覧し、歯内療法はデンタルエックス線写真上における正常像の獲得が重要であると述べた。

 シンポジウム2の歯周治療では「ここまで治せる歯周治療~歯を救うために大事なのは、コンセプト?手技?材料?~」をテーマに、プランナーとして樋口琢善氏、中野宏俊氏、発表者として芳賀 剛氏、力丸哲哉氏、瀬戸泰介氏、松延允資氏、白土 徹氏、白石和仁氏(すべて福岡県開業)が登壇した。

 まず、中野氏が歯周基本治療の重要性について述べ、その後、デブライドメントについて白土氏による講演が行われた。次に創傷治癒、血餅の保持・安定について、力丸氏、瀬戸氏、松延氏、芳賀氏が解説し、その後、樋口氏は全顎的に歯周治療が必要な症例にシングルフラップアプローチを行った症例を供覧した。樋口氏はまとめとして、歯を救うためには、コンセプト、手技、材料すべてが必要であり、これらをバランスよく融合させることで1本でも多くの歯を救えるようになると話した。シンポジウムの最後には、白石氏が全顎にわたる垂直性骨欠損の症例を供覧した。

 シンポジウム3の修復治療では「適合精度の更なる向上を目指して!~古きを温ねて新しきを知る~」をテーマに、プランナーとして田中憲一氏、中島稔博氏、発表者として筒井祐介氏、樋口 惣氏、山本真道氏、樋口克彦氏(すべて福岡県開業)、増田長次郎氏(歯科技工士、KALOS)が登壇した。

 まず、歯冠修復治療の基本的事項として、山本氏が支台歯形成について、樋口克彦氏がプロビジョナルレストレーションの調整について、樋口 惣氏が歯肉圧排・印象採得についてそれぞれ解説した。次に口腔内スキャナーにおける留意点と精度の検証として、田中氏が口腔内スキャナーの基本的事項について、筒井氏と歯科技工士である増田氏が口腔内スキャナーによる印象採得とその精度について講演を行った。筒井氏、増田氏は口腔内スキャナーを用いた場合、歯肉縁下の印象採得が困難であり、その際は圧排糸を通常より太くすることがあるが、過度な歯肉の圧排は歯肉退縮を起こす場合があるため、注意が必要であると話した。また、増田氏は歯科技工士の観点から、歯科医師と歯科技工士の考えを明確にしてから、口腔内スキャナーと加工機を選択する必要があると述べた。

 最後に、本会副会長の木村氏が閉会の辞に立ち、本発表会は閉幕した。本会は下川先生の教えを原点として、そこに立ち返りあらためて歯科治療の基本を大事にする姿勢が見えた発表会となっていた。なお、本発表会の振り返り視聴はこちらより可能(2022年2月20日まで)。