Quint Dental Gate 歯科のコミュニケーションサイト

文字サイズ
標準
特大

トピックス


2022年6月10日

日本老年歯科医学会、第33回学術大会を開催

「噛んで味わって語り合おう 老年歯科in新潟」をテーマに

ログインされますと、関連書籍が表示されます。
会員でない方はこちら
(※関連書籍がないトピックスは表示されません)

 さる6月10日(金)から12日(日)の3日間、日本老年歯科医学会第33回学術大会(小野高裕大会長、水口俊介理事長)が「噛んで味わって語り合おう 老年歯科in新潟」をテーマに、新潟市民芸術文化会館 りゅーとぴあ(新潟県)とWeb配信のハイブリッド形式で開催された。13題のシンポジウムをはじめ、2題の特別講演、一般口演、ランチョンセミナーなど多彩なプログラムが用意された。

 なかでもシンポジウム1「口腔機能低下症に関するワークショップの成果報告」では、水口氏と池邉一典氏(阪大教授)の座長のもと、口腔機能低下症における現状の課題に対し、学会としての方針決定のために行われたワークショップについての報告がなされた。海外から「7つの検査項目は恣意的に決定されている」「性差についてふれられていない」などの指摘があったことや算定率の低さを課題とし、疾患の概念、各検査項目や代替案の精査などの問題点が抽出された。水口氏は、歯科界をはじめ世界に発信できるエビデンスを確立し、理論を構築していく必要があるとしたうえで、疾患概念と診断基準などを早期に確定すると提言。ただし、口腔機能低下症はすでに保険収載されている病名としての側面があるため、慎重に再検討したうえで、来年には診療報酬改定における医療技術提案書の提出を目指すとした。

 また、特別講演2の「口腔と他臓器との関連 その医学的根拠―新潟市高齢者コホート研究―」では、岩崎正則氏(東京都健康長寿医療センター研究所)の座長のもと、葭原明弘氏(新潟大教授)が登壇。1999年から2008年の10年間に、新潟市において70歳の市民600人、80歳の市民160人あまりを対象に行われたコホート研究(新潟スタディ)の結果をあらためて披露し、口腔の健康が栄養摂取や筋力、生活習慣病やメンタルヘルスなどと影響し合っていることを再確認した。地域住民を長期間追跡した研究は数あるものの、歯科が主導してマネジメントし、歯や歯周組織の状態を記録し続けた点で同研究は白眉といえる。
 
 このほか、新潟大歯学部とシャープ株式会社が共同開発した咀嚼行動計測装置「bitescan」をもとにした研究や、XR技術を介助者の歯みがき訓練に役立てる研究など、高齢者歯科医療の新たな可能性を感じさせる講演が多数見受けられた。