2023年7月13日掲載

フェイクメディア、スマイルの分析についての特別講演も

第82回東京矯正歯科学会学術大会開催

第82回東京矯正歯科学会学術大会開催
 さる7月13日(木)、有楽町朝日ホール(東京都)において、第82回東京矯正歯科学会学術大会(本吉 満会長)が開催され、1,104名が参集した。

 午前は一般口演Ⅰ~Ⅲが行われ、症例報告として成田信一氏(東京都開業)らによる「便宜抜歯により誘発された局所加速現象を利用し、7か月で動的治療を終了した右側Ⅱ級左側Ⅰ級叢生症例(上顎左右下顎左側第一小臼歯抜歯)」など、データ分析研究として佐々木耀史氏(鶴見大)らによる「不正咬合の重症度と口腔機能の関連性について」など、基礎研究として河合良太氏(昭和大)らによる「生体内プロテアーゼによる破骨細胞分化調節-カテプシンKによるオステオプロテゲリンの分解」など、材料に関わる研究として嘉悦 崚氏(日大)らによる「マウスピース型矯正装置のアタッチメント装着時における分離材の影響」など11題が講演された。

 午後は特別講演Ⅰとして、越前 功氏(国立情報学研究所)による「Real or Fake? 生体情報の共有とフェイクメディア生成~インフォデミックの克服に向けた取り組み~」が行われた。本講演では、SNSの普及と画像・映像編集ソフトやアプリケーションの発達によって、だれでも手軽に現実には存在しない画像・映像を編集・生成した「フェイクメディア」を生み出せるようになった「インフォデミック」の状況下において、氏が研究代表者となり、科学技術振興機構(JST)の戦略事業として多業界の一人者たちと協働し研究を進めている「インフォデミックを克服するソーシャル情報基盤技術」の最新研究成果について解説された。研究のうちフェイクメディアでは特に多い顔の合成・生成についてその真贋を判断し、無毒化(加工前の画像・映像に戻す)するプログラムの開発と実用化を紹介し、こうした状況で人権や知的財産を守るために、本研究が世界の注目を集めていることが示された。

 また特別講演Ⅱとして、菅原 徹氏(早稲田大人間総合研究センター)による「笑顔に勝る化粧なし ~感性工学による表情分析とスマイル・デザイン~」が行われた。歯科矯正分野では日常的に扱われる口元のスマイルであるが、歯科矯正学の視線とはまた異なる脳科学、心理学、社会学などの総合的な学術分野からスマイルを分析し、学生との研究や企業との共同事業に取り組む菅原氏が、人の目を引くスマイルとは何かを解説した。また現在取り組んでいる、歯科医院と協働してスマイルの分析を歯科に活かすプロジェクトについてもふれつつ、人が美しいと感じる笑顔づくりのトレーニングなどについても伝えた。

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