2023年9月2日掲載

「摂食嚥下リハビリテーションと多様性」をテーマに

第29回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会開催

第29回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会開催
 さる9月2日(土)、3日(日)の両日、パシフィコ横浜ノース(神奈川県)において、一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会第29回学術大会(芳賀信彦大会長、鎌倉やよい理事長)が開催され、現地には5,000名以上(参加登録:7,000名以上)が参集し盛会となった。

 多様性をテーマとした本会では、海外演者や患者・家族の講演、多職種の演者を含む講演がプログラムに組み込まれた。展示には体験コーナーも設置された。

 2日目には、特別講演2として遠藤秀紀氏(東大総合研究博物館教授)が「咀嚼器と運動器に着目した人体の進化史的理解」のタイトルで講演した。遠藤氏は獣医師で動物の解剖のわかりやすい解説で定評がある。「博物学は形態学に結びつく」とし、実物写真や骨格標本を多用し野生動物の摂食とともに頭部形態の進化を解説した。生物として特殊なヒトの形態と摂食行動について楽しく講演された。

 教育講演6では「患者・家族から学ぼう」(座長:小城明子氏〔東京医療保健大〕/演者:松山 博氏〔日本ALS協会神奈川県支部役員〕、加藤さくら氏、永峰玲子氏〔ともに一般社団法人mogmog engine〕)と題して、患者本人の講演と、摂食嚥下障害の子どもを育てる患者家族会の取り組みが紹介された。演者らの所属する一般社団法人mogmog engineは、特別支援学校のイベントを発端とした患者家族の取り組みが元となり設立されたことが述べられ、企業や自治体とも協力するなどの精力的な活動例が報告された。また、摂食嚥下障害は高齢者への支援が中心で、小児でも患者が増えていることは一般の認識が低く、家族の負担が課題となっていることを訴えた。

 海外招待講演6では「嚥下診療における歯科医師の役割」と題し、Orapin Komin氏(タイ・Chulalongkorn University)が登壇。タイにおける高齢者の寿命延伸による口腔診療の変化と歯科医師の役割が解説された。長年行われているタイと日本との学術交流にも参加し、施設内にとどまらない発信の有効性を紹介した。続いて中川量晴氏(医歯大大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)により日本における摂食嚥下障害を起こしうる疾患や高齢者口腔診療の要点を解説、コロナ禍でもWebを活用し、タイの医師・歯科医師とのスタディーグループでの情報交換を盛んに行った国際交流の実例を報告した。

 シンポジウム3「摂食機能療法・摂食嚥下支援加算 の運用の実際と今後の課題」では、座長の依田光正氏(昭和大横浜市北部病院リハビリテーション科)のもと、摂食機能療法・摂食嚥下支援加算の運用方法が各種施設のタイプごとに紹介された。大学病院や地域中核病院、回復期リハビリテーション病院や療育型医療施設といったそれぞれの特徴に応じた運用と今後の課題、摂食機能療法・摂食嚥下支援加算制度の問題点や今後についても語られた。

 なお、本学術大会の講演の一部は、2023年9月26日(火)からオンデマンド配信が予定されている。また、次回の第30回学術大会・総会は、きたる2024年8月29日(木)から31日(土)の3日間、福岡国際会議場(福岡県)にて弘中祥司大会長のもと開催予定である。

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