2023年11月12日掲載

「Trends & Future direction ―基本治療をふまえた未来の歯科臨床を探る―」をテーマに

第15回STEP annual meeting with R and PABC開催

第15回STEP annual meeting with R and PABC開催
 さる11月12日(日)、西部ガスホール(福岡県)において、第15回STEP annual meeting with R and PABC(STEP主宰:田中秀樹氏、R・R2主宰:徳永哲彦氏、PABC主宰:安東俊夫氏)が、「Trends & Future direction ―基本治療をふまえた未来の歯科臨床を探る―」をテーマに開催された。本発表会では、「歯周」「咬合」「デジタル」の3つのパートで会員発表が行われ、最後には招待演者として正木千尋氏(九歯大)が講演した。

 まず、「歯周」パートでは、中富研介氏(福岡県開業)がプランナーを務め、宮園香樹氏(福岡県開業)が根面被覆術、脇田祐輔氏(大分県勤務)が歯周組織再生療法について講演した。宮園氏は、根面被覆術を行ううえで基本となるMillerの分類およびCairoの分類といった歯肉退縮の分類から解説を行い、次に術式選択や結合組織の採取方法について初学者にもわかりやすいように平易に説明。脇田氏は、歯周組織再生療法を行ううえでまずは患者選択と欠損に応じた治療選択が重要であることを述べ、その後にCortelliniらが提唱する「切開線」「フラップデザイン」「再生材料」の選択におけるフローチャートを提示し、それに則った症例を供覧した。

 「咬合」パートでは、小川允知氏(福岡県開業)がプランナーを務め、まずは駒澤 誉氏(福岡県開業)が咬合治療を行うために知っておくべき解剖学的構造の知識を、自身で作成したイラストとともにわかりやすく解説。次に、深町太伊地氏(福岡県開業)は咬合における二次元的な顎位の評価方法である「ゴシックアーチ」の基本的な知識を説明し、その後それを用いた咬合再構成の症例を提示した。山尾康暢氏(福岡県開業)は三次元的な顎位の評価方法について講演。下顎運動解析診断総合コンピュータシステム、筋電気刺激装置を用いて、筋肉位による顎位の分析および筋リラクゼーション後の安静位、咬頭嵌合位を獲得する方法について解説した。

 「デジタル」パートでは、荻野真介氏(福岡県開業)がプランナーを務め、田代 剛氏(佐賀県開業)が口腔内スキャナーとチェアサイド型ミリングマシンを用いた修復および補綴治療について、川谷温美氏(福岡県勤務)が口腔内スキャナーを用いて前歯部審美補綴治療を行う際の歯科技工士との連携について、布巻純治氏(山口県開業)がダブルスキャンテクニックを用いて行う咬合再構成治療について、それぞれ解説した。

 最後の特別講演では、正木氏が「インプラント治療におけるトラブルとその対応~デジタルの有用性や問題点~」と題して講演。まずインプラントの生存率、生物学的合併症および機械的合併症などのインプラント治療の基本的知識を説明し、適切なエビデンスを適宜提示しながら、インプラント治療に関するさまざまなトラブルとその対応について述べた。正木氏は、インプラントを埋入する際にフリーハンドで行うよりもフルガイドのほうが精度が高くなることを示したが、フルガイドで埋入する場合でも埋入ミスを生じることがあるため、リカバリーが行えるようにフリーハンドで行う技術の習得が必須であると話し、これは特に若手歯科医師にとって大きな学びとなったのではないだろうか。

 最後に、本発表会実行委員長の荻野氏が閉会の辞を述べ、熱気に包まれたまま盛会裏に終了した。

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