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2024年11月号掲載

FDI教育委員会委員に 就任した研究者

※本記事は、「新聞クイント 2024年11月号」より抜粋して掲載。

日本の歯科の取り組みを共有し世界の歯学教育に貢献したい

 9月にトルコ・イスタンブールにおいて開催されたFDI(世界歯科連盟)世界歯科大会の総会にて行われた選挙にて、鶴田 潤氏(東京科学大学ヘルスケア教育機構教育教授)がFDI教育委員会委員にトップ当選を果たした。本欄では、鶴田氏にFDI の活動内容や教育委員会の役割について解説いただくとともに、国際的な視点から見る日本の歯科医療および歯科医学教育の現状、そして日本から世界に発信できるプレゼンスについてうかがった。

鶴田:FDIは、スイス・ジュネーブに本部を構え、口腔衛生に焦点をあて、歯科診療、公衆衛生、歯学教育などを中心に全世界の歯科医師の情報交換の促進を目的とした団体です。本部より通知された政策声明案について、各国歯科医師会が現場からまとめた課題を大会の場で共有し、意見交換や議論を重ねます。そして、取りまとめた資料をFDIの政策声明として公表していくことが大きな職務の1つといえます。

 私が拝命しました教育委員会では、先進国・途上国さまざまな国の状況をふまえつつ、歯学教育の課題について検討していくことが挙げられます。また、学術大会の開催にあたり、各国地域ごとに異なる現状と今後の歯科医療提供を見据えた演題の検討、そして講師の選定をつうじて世界全体の生涯教育のディレクションを担います。本委員会委員に就任するにあたり、組織内で日本のプレゼンスを発揮したいと思います。その点において、日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えた国であり、日本の高齢者医療への取り組みについては参加国から高い関心とともに期待の目が向けられています。日本の取り組みを成功モデルとして共有できるように努める所存です。

 情報共有にあたり、臨床症例の手技・手法のみでなく、診療における制度についても伝える必要があると感じています。というのも、各国の医療・歯科医療制度や診療形態、関係職種間の業務範囲が異なるゆえに、日本の事例をそのまま他国で応用できるとは限りません。訪問診療や地域包括ケアシステムなどは最たる例でしょう。しかし、高齢化先進国の日本が歯科の課題として捉えている事例を各国に問題提起する意義は大きいと考えています。

 大学においては長年にわたり歯学教育の研究や国際渉外を担当してきましたが、国際的な評価を受けることは国内関係者の評価認識にも大きな影響を与えます。そのため国際にかかわることは、新たな視点を国内へもたらすことにもつながります。これまでも日本は多くの留学生を歯学教育の場に受け入れ、人材育成をつうじて国際貢献してきましたが、日本は地理的な要因からか海外に情報が届きづらいのも事実です。昨今、人材確保が激化しているだけに、諸外国から日本が歯学教育の学びの場として魅力を感じられるような積極的な情報発信が必要です。先駆的な取り組みの情報発信をつうじた国際貢献をとおして、日本の歯科医療の発展に貢献したいと思います。