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2025年10月号掲載

第17代理事長に就任した 日本顎咬合学会の「顔」

※本記事は、「新聞クイント 2025年9月号」より抜粋して掲載。

今こそ咬合の大切さを多角的な視点から伝えたい

 6月より特定非営利活動法人日本顎咬合学会の第17代理事長に就任した金沢紘史氏(東京都開業)。氏は、2年間の任期のなかで国内最大規模の臨床医が集まる学会をどのような舵取りで会員を導いていくのか――。「噛む」だけでなく「咬む」ことの大切さが再注目されているなか、将来を見据えた学会の方向性とあり方についてうかがった。

金沢:本会の学会名に冠している咬合は歯科の根幹であり、歯科臨床におけるさまざまな処置と密接に関連しています。これまで咬合については、いくつかの分野(補綴歯科学、矯正歯科学、歯周病学、小児歯科学など)で捉えられていましたが、統合的に臨床現場のニーズに応えられることを目的として本会が設立されました。

 良質な歯科医療を提供するためには、歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士による三位一体の協働が不可欠です。それぞれの専門性が発揮できるように生涯をつうじて国民の健康な咬合を予防面、育成面、再建面、維持・管理面から支えることが本学会の担うべき役割と考えます。

 そのために私が理事長として根底に考えているのは、会員目線での学会運営です。日々の歯科臨床に携わっている歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士の会員が本会の進むべき方向性も含めて、本会に何を求めているのか、何を期待しているのか、本部・支部の学術大会や学会誌、認定制度などをとおしてさまざまなご意見をいただきながら、本会役員が一致団結して会員の皆様の気持ちに応えられるよう、舵取りの責務を果たして行きたいと思っています。

 また本年、日本補綴歯科学会と締結した連携協定についても、学会間の連携をつうじて、科学的根拠に基づいた臨床医療のさらなる向上が実現できるものと期待しています。今後はさらに他学会との連携強化も見据えて活動したいと考えています。

 歯科医療を取り巻く学術的環境は日進月歩です。情報過多の時代のなかで、これらを日々の診療に反映させるためには、学会などに積極的に参加して学んでいくことがわれわれ医療人の努めであり、求められる姿と思います。

 本会は、顎咬合学をとおして口腔を総合的な臨床力で管理し、国民の健康を支えることを目標としています。それを実現するためには咬合を育む小児歯科、咬合を成熟させる矯正、咬合を支える歯周・歯内、失った咬合を再建する補綴、咬合を保全する予防・衛生管理、高齢者の支援など幅広い分野での多職種連携が求められます。今後も会員が臨床力を研鑽できるように学術大会・支部学術大会・学会誌・認定研修会など、現場のニーズに即した充実したコンテンツを提供してレベルアップを図りたいと思います。

 学会の理事長としてこれから2年間、会員はもとより国民に今こそ咬合の大切さを多角的な視点から伝えられるように努めたいと考えています。