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2025年9月号掲載

President に就任する 国際補綴歯科学会の「顔」

 ※本記事は、「新聞クイント 2025年9月号」より抜粋して掲載。

補綴歯科分野における国際的な会議の場を充実させたい

 このたび、馬場一美氏(昭和医科大学歯学部長)が、日本人として14年ぶりに国際補綴歯科学会(ICP)のPresident に就任予定である。本欄では、馬場氏にICP の組織概要や活動目的、また国際組織としての役割をご解説いただくとともに、President就任にあたり尽力したいことや学会としての展望についてうかがった。

馬場:Dr. Limor Avivi Arber(カナダ・トロント大学准教授) とともに、2026-2027 年の国際補綴歯科学会(以下、ICP)の Co-President(共同会長)に就任する予定です。日本人のPresident 就任は、14年ぶり5人目となります。

 ICPは、1985年にアメリカで設立された組織で、補綴歯科の専門性と学術的知識をグローバルに普及・発展させることを目的としています。発足以降隔年で学術大会を開催しており、開催年にあたる本年は9月2日から5日にかけて、カナダ・トロントにて第21回学術大会(Dr. Limor Avivi Arber大会長)が開催されます。

 日本には、日本補綴歯科学会(Japan Prosthodontic Society:JPS) があるように、各国においても学術発表や技術交流をつうじて歯科補綴学の発展を支える組織があります。しかし、国によって機器の普及率や技術水準はさまざまです。国際的な交流の場を設けることによって各国が新たな視点を取り入れることで、さらなる発展が期待されます。ICPは、最新の研究成果や技術・マテリアルの共有、若手を中心とした教育助成制度、さらには学術交流による新たな発見や学びの場の創出などをつうじ、臨床意欲の向上を図っています。教育コンテンツの制作やワークショップの開催など、取り組みは多岐にわたりますが、学会の発展に不可欠な国際的なネットワークをつくるにあたり、冒頭で挙げたface to faceの学術大会を重要な取り組みとして位置づけています。

 「補綴歯科治療」は、クラウンや義歯、接着修復、インプラントなど広域な要素からなる学術領域です。近年はデジタル技術の発展により臨床の効率化や質の均一化が進んだ一方で、歯の欠損に対する治療のゴール設定やワークフローは複雑化しています。そこで、学会として各国の知識と専門性を共有し①最先端研究と技術革新の牽引、②経済的側面も含めた発展途上国への支援を行い、国際的な治療水準の底上げを目指しています。

 今回の就任にあたり、会員向けに無料公開しているWebセミナーのコンテンツ拡充や教育助成ブログラムの認知度向上と利用促進を図り、優秀な若手人材の発掘と育成に努め、補綴歯科を国際的に活性化させたいと考えています。また、2021-2022年度にJPS理事長を務めた経験を活かし、わが国のプレジデンスを世界に発信し国際貢献につなげてまいります。2027年にフィンランド・ヘルシンキで開催される第22回学術大会は、私のPresident任期中に開催されます。どうぞご期待ください。