2025年11月号掲載
マイクロスコープ治療で注目を集める臨床家
※本記事は、「新聞クイント 2025年11月号」より抜粋して掲載。
自分自身の可能性を信じ、日本から世界に発信してほしい
マイクロスコープ治療の第一人者として、日本のみならず海外の講演やコースが好評を博している鈴木真名氏(東京都開業)。氏の著書『Illustrated Periodontal Microsurgery Advanced Technique』は英語版を含めた6か国語に翻訳され、世界中の臨床家から高い評価を得ているなか、氏はどのようにして世界レベルに達したのか。世界を目指す歯科医師に伝えたいメッセージとは――。
鈴木:世の中に認められる歯科医師になるためにまず目指すべきは、良質な歯科医療を提供することであり、その評価は3 つあると考えています。
1つ目は、患者さんの評価です。その評価を高めるためには、つねに最先端の知識や技術を学び、妥協しないことです。そして継続する姿勢こそが信頼を生み、評価につながります。
2つ目は、同業者や歯科界からの評価です。私はかつての日本の歯科が世界で過小評価されていたことを肌で感じ、日本のすばらしさをもっと世界に知ってもらうために、自分の臨床や考えを国内に限らず海外での発表や英語での出版など、継続的な情報発信に注力してきました。
3つ目は、自己評価です。いまやSNS での評価は1 つの方法かもしれませんが、学会や専門誌といった公の場で評価され、自分で納得できることが真の意味での自身の評価につながります。また、実際に現地へ行き、会場で講演を聞き、直接講師などと話すことで得られるその感動や刺激は何にも代えがたいものです。そのようなリアルな経験こそが、次の大きな成長の糧になります。近年、タイパやコスパが重視される傾向にあるなか、実は遠回りに見える経験こそが本当の力になると確信しています。
この3つの評価を意識して、日々の臨床に取り組むことが大切です。 私自身を振り返ると、成長のきっかけは「すばらしい出会い」でした。Dr. Raymond Kim、山﨑長郎先生、そしてマイクロスコープの第一人者であるDr. Dennis Shanelec との出会いが、私の歯科医師人生を大きく変えてくれました。なかでもDr. Kim は、「30代までは自分に投資しなさい。40代で世に出なさい。50代からはその投資が返ってきます」と助言いただき、若いうちは自分への投資を惜しまないことが、やがて真の評価と経済的な豊かさにつながることを教えてくれました。
若い歯科医師は、まずは歯科全体を広く学んでほしいです。最初から専門分野に絞ると視野が狭くなってしまうので、全体を学んだうえで得意分野を見つけて深掘りしてください。そして評価される歯科医師として、「患者・同業・自身の三方向から評価され努力を続ける」「良い出会いを活かし、つねに学び進化する」「正統な舞台で発信できる」「遠回りを恐れず自己投資を続ける」「広く学び、専門分野をきわめる」ができる人を目指してください。
皆さんも、日々の臨床を大切にしながら、自分自身の可能性を信じて日本から世界に発信してください。私は、その一歩が日本の歯科の未来を変えていくと信じています。