2025年7月号掲載
オゾン化グリセリンの普及・啓発を目指す
※本記事は、「新聞クイント 2025年7月号」より抜粋して掲載。
歯科領域にオゾン化グリセリンのすばらしさを伝えたい
株式会社メディプラス製薬は1973年の創業から50年にわたり、オゾン活用の応用技術(オゾネーション)の開発に一貫して取り組んできた。同社が2002年に開発した独自成分「オゾン化グリセリン」は、医療・美容の業界のみならず歯科医療の現場でも注目されてきている。本欄では、同製剤の開発者である塩田剛太郎氏(同社取締役)に、同技術・製品の開発および歯科の臨床現場における可能性など、今後の展開についてうかがった。
塩田:株式会社メディプラス製薬(以下、当社)は私の父が創業し、オゾンをテーマとした研究・開発に長年取り組んでまいりました。当社が開発した「オゾン化グリセリン」(特許取得済)とは、オゾンとグリセリンを反応させた新規化合物です。オゾンは非常に不安定な物質ですが、グリセリンは無色透明な低分子の物質で、水に溶けやすく非常に安定した性質を有しています。代表的な保湿剤の1つとして化粧品の基材に多く使用され、医薬品や食品添加物などの用途にも幅広く使われています。
オゾン化グリセリンの研究・分析を進めていくなかで、多様な機能を有していることがわかってきました。その作用機序として、成分中の新規オゾン化合物が酸素原子(フリーラジカル)を介して作用することで、①抗菌効果②止血効果③抗炎症効果④細胞増殖効果⑤コラーゲン生成促進効果――というような効果を発揮します。
これまで歯科領域で利用されているオゾンの代表的な製品として、初期う蝕を治療するためヒールオゾンや、オゾン水による消毒・殺菌・治癒促進などがありますが、使い勝手や費用対効果が課題としてありました。またオゾンは、副作用がなく安全性を有することが特長の1つとして挙げられます。
現在、厚労省が薬剤耐性菌への対応について警鐘を鳴らしているように、従来の抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」を有する細菌が世界中で増えてきていますし、すでに抗菌薬への耐性を有するさまざまな細菌が確認されています。このため、感染症の予防や治療が困難になるケースが増えており、今後も抗菌薬の効かない感染症が増加することが予測されます。歯科領域でも抗菌薬の処方について薬剤耐性の観点から対応が求められます。
そのような背景のもと、オゾン化グリセリンは、臨床現場で安全性と効果を認められ、医療関係者の間でも話題となりました。その後、研究開発を重ねて製品の安定化に成功しましたので、2022年に量産工場を竣工しました。
現在、歯科領域にもオゾン化グリセリンの効果を普及・啓発するために、それを配合し抗菌・抗炎症特性を有した口腔製品を発売しています。今後は製品群をさらに増やしていくことで、歯科領域にもオゾン化グリセリンのすばらしさを伝えていくとともに、世界初そして日本発の技術を国内外にアピールし、免疫細胞だけでなく歯科界も活性化させたいと思っています。