2025年8月号掲載
新会長に就任した 日本歯科医学会の「顔」
※本記事は、「新聞クイント 2025年8月号」より抜粋して掲載。
社会実装をふまえた歯科界の活性化に貢献したい
歯科界の46 分科会で構成される学術団体を束ねる日本歯科医学会の会長として長年活躍された住友雅人氏が勇退され、第29 代会長として小林隆太郎氏(日本歯科大学附属病院病院長)が就任した。本欄では、住友氏の会務運営をすぐ傍らで見続けてきた小林氏に日本歯科医学会の役割について解説いただくとともに、これまでの経験をもとに歯科界をどのように活性化していくのか、その展望をうかがった。
小林:日本歯科医学会第115 回臨時評議員会において、第29 代会長を拝命いたしました。多くの先生方からご推薦いただいたことに感謝申し上げるとともに、伝統の継承と新たな価値の創造を掲げて職務をまっとうする所存です。
住友雅人前会長は、6 期12年にわたり会長を務められ、「2040 年への歯科イノベーションロードマップ」の策定をはじめ、日本歯科医師会の活性化につながる取り組みを行うなど精力的に歯科界のかじ取りを担われました。会長職を拝命するにあたり、住友執行部が中長期で設定した歯科ビジョンや培われた知見をベースとしつつ、傍らで会務運営に携わらせていただいた私の経験に基づく思案を付加していきたいと考えています。そして、今回会長というバトンを受け継いだタイミングで、より歯科界を活性化させるアクセルをふみたいと思います。われわれの職務は学術組織として独立性を担保しつつも、関連団体・組織が風通し良く活動できる環境を整備し、レスポンスの良い「連携」を実現することだと考えています。
近年、医科でも全身疾患と口腔の健康状態が密接な関係にあることの認知が広まり、令和6 年度診療報酬改定では医科歯科連携のさらなる推進に向け、歯周病の増悪因子となる糖尿病患者に対する歯科処置や情報連携に対する評価が拡充されました。医科の診療報酬においても、多職種との連携や糖尿病患者に対する歯科受診の推奨が要件とされ、国民から全身の健康ひいてはQOL 向上に対する歯科への期待は大きく、潮目の変化を感じます。
限られた予算の中で国民により効果的な医療を提供するにあたり、新規技術を保険収載するには医療技術評価提案書の妥当性が検証されます。本提案書はわれわれの分科会が集積したエビデンスをもとに作成されますので、本学会の活動目的「歯科医学を通じて人々の健康と福祉に貢献すること」に資する重要な取り組みとなります。
また、歯科界に限った話ではありませんが、IT 技術の革新による情報化の波を受け、歯科医療技術のアップデートも非常に速い時代となりました。そのため、5 年後、10年後の変化を見据えた施策を展開したいと思います。そして、その延長線上に存在するのが冒頭に申し上げた「2040 年への歯科イノベーションロードマップ」であり、社会実装へとつながっていくのです。
社会実装をふまえた歯科界の活性化のために貢献したいと思います。