2026年8月号掲載
地域連携で口腔育成に取り組む歯科医師
※本記事は、「新聞クイント 2026年8月号」より抜粋して掲載。
保育施設・家庭・歯科医院をつなぎ、子どもの口の未来を守りたい
子どもの健やかな口腔の発達は、歯科医院だけで支えることが難しい――。そう語る後藤晶子氏(子どもの歯を考える会代表、東京都開業)は、保護者だけでなく保育施設や歯科医院と連携し、地域で口腔機能の発達を乳幼児期から支えることを目的に、「にこにこ歯プロジェクト」を立ち上げた。本欄では、氏が取り組むプロジェクトの内容やその活動に対する想い、今後の展望についてうかがった。
後藤:近年、う蝕のある子どもは減少傾向にある一方で、歯並びや噛む機能、口呼吸など、新たな課題への関心が高まっています。周知のとおり、口腔の健康は全身の発育にも影響することが報告されており、「予防」の概念も大きく変わりつつあります。
そこで子どものう蝕予防や歯並び、口腔機能の発達を乳幼児期から地域で支えることを目的に、「にこにこ歯プロジェクト」を立ち上げました。現在は、保育施設や賛同する歯科医院との連携を広げながら、子どもたちのお口の健康を支える仕組みづくりを進めています。
本プロジェクトは、地域の保育施設や家庭、歯科医院をつなぎ、子どもたちのお口の健康を早い時期から支えるための予防啓発活動です。参加保育施設には、予防歯科に関する絵本、アニメ、紙芝居、ニュースレター、掲示ポスターなどを無料で提供しています。
きっかけは、私が3児の母親として小児歯科診療の現場で感じてきた課題でした。予防歯科が周知されてきた一方で、歯並びや口腔機能の発達については、保護者や園の先生方に十分な情報が届いているとはいえません。子どもの口腔の健康を守るためには、歯科医院だけが頑張っても限界があると実感したので、子どもが長い時間を過ごす家庭や保育施設と連携し、難しい専門用語ではなく保護者が今日から実践できるような理解しやすいメッセージを届けることが重要だと考えました。
現在、本プロジェクトでは30施設、3,500人以上の園児に向けて情報を届けています。世田谷区の支援も受けながら、保育施設でのイベントや保護者向けの情報発信をつうじて、日常生活のなかで自然に「お口を育てる」きっかけづくりを進めています。
歯科医院は治療だけでなく、地域の健康教育の拠点になれる存在です。保育施設は、毎日子どもたちを見守る立場だからこそ小さな変化に気づき、保護者へ橋渡しできる大切な存在です。そして日々の生活を支える家庭で、少しずつ意識を変えることができれば、将来の大きな予防につながると考えています。歯科医院は、その取り組みを専門的に支える存在でありたいと思っています。
このたび、現在は2つの幼稚園の運営に携わる古谷野 潔先生(九州大学名誉教授)に本プロジェクトの顧問に就任していただきました。今後は、本活動に賛同する歯科医院を全国に広げ、各地域で保育施設や家庭、歯科医院がつながることで、地域全体で子どもたちの口の未来を守りたいと考えています。