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2026年9月号掲載

歯科口腔保健分野の統括研究官に就任した

※本記事は、「新聞クイント 2026年9月号」より抜粋して掲載。

科学的根拠と政策実装をつなぐ橋渡し役を果たしたい

本年4月、国立保健医療科学院の歯科分野の統括研究官に就任した恒石美登里氏。日本歯科医師会が設置した日本歯科総合研究機構において、約20年にわたり歯科医療政策や口腔保健に関する調査・研究に携わり、主任研究員を務めてきた氏は、その経験・スキルをどのように活かすのか。本欄では、同院の役割と氏が目指すビジョンについてうかがった。

恒石:これまで私は、大学病院における予防歯科臨床・疫学研究の経験を基盤に、日本歯科医師会の日本歯科総合研究機構において、長年にわたり全国レベルの歯科医療提供体制や医療経済に関する調査研究、ならびに介護を含めた多職種連携体制構築に関する政策的課題に携わってきました。たとえば、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)をはじめとするデータや各種統計などを用い、歯科診療所数や無歯科医地区・準無歯科医地区の発生状況、外来歯科医療費やう蝕などの有病状況の地域差を時系列で明らかにしてきました。また、介護保険施設などや病院との連携状況、在宅歯科医療の提供実態、医療計画における歯科の位置づけなどに関する調査を多数実施してきました。さらに、歯数とアルツハイマー型認知症、誤嚥性肺炎、医科医療費との関連を明らかにしたNDB研究に携わってきました。

 このような経験から、地域における歯科保健医療提供体制の実態を的確に把握し、課題解決に資するエビデンスを創出するために、①医療・介護・公衆衛生データを活用した地域格差・偏在構造の分析、②医科歯科連携・多職種連携体制の構築に関する調査研究、③健康寿命延伸と口腔健康管理との関連の科学的検証と政策展開――の3つを検討したいと考えています。

 つぎに、地域歯科保健医療に携わる自治体職員の養成は、当院の重要な役割と考えています。大学や各地の歯科医師会・自治体において、歯科保健医療提供体制、地域包括ケア、医療経済などに関する講義・研修を数多く実施してきた経験や人脈を活かし、①自治体職員・歯科医療関係者を対象とした実践的研修の充実、②医科・介護分野との協働を重視した多職種連携型研修の推進、③次世代の歯科保健リーダーの育成――の3 つを中心に取り組みたいと考えています。

 当院は、実際のデータを活用した科学的知見に基づき、国・自治体の施策立案を支援すること、さらに地域の現場で実践できる人材を育成することが求められます。また、限られた人材のなかで地域歯科保健の中核的機能がよりいっそう発揮でき、歯科口腔保健施策の発展につなげるためには、行政と地域歯科医療・保健の実施主体である歯科医師会などとの連携が不可欠であり、相互に良好な関係性を保てるように尽力していきたいと考えています。

 統括研究官として、歯科のみならず医療・介護・公衆衛生分野との連携を深め、健康寿命延伸に資する包括的な保健医療体制を構築するための科学的根拠と政策実装をつなぐ橋渡し役を果たしたいと思います。