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2025年9月号掲載

歯科における災害への「備え」

 ※本記事は、「新聞クイント 2025年9月号」より抜粋して掲載。

 災害を引き起こす自然現象は、地球温暖化の影響を受ける風水害においては明らかに増加・増悪している。

 自然現象が「災害」とよばれるか否かは、犠牲や被害がともなうかどうかであり、「備え」て防ぐべきは人命と社会生活への影響となる。だれも命を落とさず電気・水道・交通網がもちこたえていれば、社会生活が大きく妨げられるほどの被害は生じず、新たな健康課題が発生することは考えにくい。

 歯科における「備え」とは、歯科が支える社会への効果を妨げないための歯科診療(所)の継続対策といえる。被災しても、歯科診療所の建物やスタッフ、システム、そして資器材の物流や歯科技工物の作製が縮小したとしても、継続できる実効性のある歯科診療所の事業継続マネジメント(BCM)が必要とされている。

 自然災害ではなくとも、感染症の流行や、人口減少による労働者不足によっても、事業の継続には困難がともなう。BCMの観点から「備え」ていくことは、あらゆる関係者とのつながりや助け合いを探ることでもあり、結果として、地域連携・多職種連携のもとで乗り切っていく工夫を身につけていくことともなる。

 本年7月の災害救助法の改正により、都道府県知事等が救助に関する業務に従事させることができる医療関係者として、歯科技工士が追記された。まずは歯科三職種と、保健医療福祉関係者が連携して、社会生活への影響を最小とするための「備え」が問われている。