2024年9月号掲載
ソーセージテクニックのUrban氏による骨造成の最新テクニック
【PR】Urban氏による世界最高峰の硬軟組織マネジメントがここに!
※本記事は、「新聞クイント 2024年9月号」より抜粋して掲載。
小社2024年7月の新刊として、『Vertical 2 骨造成 垂直的および水平的歯槽堤増大術の完成形』が刊行されました。本欄では、石川知弘氏(静岡県開業)に、本書の特徴と見どころを語っていただきました。
(編集部)
GBRにおける困難に対するUrban氏の対処法が詳細に示されている
GBR(骨再生誘導法)は、インプラント治療を手掛けるほとんどの歯科医師が経験する処置であろう。内側性の欠損であれば、スペースメイキング、フラップマネジメント、骨再生のポテンシャルは有利な条件となるが、外側性、特に本書のタイトルである垂直的な骨造成はもっとも困難な処置となる。スペースメイキングのために、非吸収性膜を使用し、一次治癒を達成するためには、的確なフラップマネジメントが求められる。ある程度のトレーニングを積めば非吸収性膜を使用してもほとんどの症例で裂開を起こすことなく治癒させることができるようになるが、それでも膜下の組織が完全に骨化し、長期的に維持されるかは、この段階ではわからない。欠損が重症になれば、膜直下までの完全な骨再生はさらに難しくなるだろう。さらに、GBRによって骨が再生できても、往々にしてMGJ(歯肉歯槽粘膜境)の移動によってインプラントサイトにおける角化組織の不足が、また軟組織の厚さの減少も起こりうる。本書ではこのようなGBRにおける困難に対する著者の対処法が、詳細に示されている。
全28章、560ページのボリュームでUrban氏のテクニックを余すことなく解説
1章では、可及的に膜直下まで良好な骨再生を獲得するための試みとして、有孔PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜、BMP-2(骨形成タンパク質2)の併用などについて検証され、とても興味深い。2章では、有孔膜のケースシリーズが示され、著者のテクニックのパフォーマンスが詳細に報告されている。3章からは、部位ごとに必要な解剖学的な知識と垂直GBRのテクニックが実際の手術の連続写真とともに解説されている。
3章から7章では、下顎臼歯部の垂直欠損について、前著『垂直的および水平的歯槽堤増大術』の内容をさらに深めたものとなっている。症例は重症度を増し、近心壁の急傾斜、過度の瘢痕形成、狭小な顎堤への対応は経験を重ねた著者だからこそ得られた貴重な情報である。2章の下顎臼歯部は著者のケースシリーズの中でももっとも頻度が高い。重度な骨吸収のため、下歯槽神経に制限され、インプラント埋入が不可能な症例に対してGBRがいかに効果的であるかがわかる。
8章から10章では、下顎前歯部に関して特に舌側のフラップの減張ステップが連続写真でわかりやすく示されて、まさに「百聞は一見に如かず」である。本文中にはないが、著者は減張操作中に現れる2本の管が舌下動脈であることをカダバーにおいて自身で確認されたそうである。この部位において高さのみならず、水平的な増大と、舌側における角化組織の獲得の重要性も強調されている。11章から15章までは、上顎臼歯部で主としてサイナスリフトに関して感染時の対応、歯槽骨欠損、口腔上顎洞瘻をあわせもつ症例への対応など、アドバンスな内容が解説されている。
16章から18章は、上顎前歯部における多数歯欠損に対するGBRとその後の処置が解説されている。上顎前歯部は口蓋側のフラップが減張できないことと、審美性の要求度が高いことから、もっとも難易度の高い部位であるが、本書の欠損は前著に比べ、その重症度と範囲が拡大されている。前著で示された状況に応じたフラップアドバンスメントのテクニックが駆使され、歯列弓に沿って歯槽堤が三次元的に増大されていく過程がステップバイステップで示されている。16章の症例は、私が以前に著者のコースを受講した際に実際に見せてもらった症例であるため、私にとっても非常に得るものが多かった。
17章と18章では、治癒のポテンシャルに応じて自家骨の比率をコントロールして対応していることが示されている。特に18章の症例は、GBRの可能性を示す貴重なものであろう。本年6月に開催されたワールドインプラントサミットにおける著者の講演では、良好な結果が示されていた。
19章から27章では、軟組織、隣在歯の歯周組織のマネジメントについて解説されている。前述したGBR後にはMGJの移動、口腔前庭の狭小化、軟組織の厚さの減少などが起こりうる。特に重症例で、広範囲な垂直的なGBRが行われた場合、術後の広範囲に発生したこれらの問題を解決する方法はこれまで明確に示されてはいなかったといえよう。著者は軟組織の量と質を改善するステップと、MGJの変移を可及的に審美的に改善するステップを設定し、状況に応じて使い分けている。19章に著者の豊富な経験によってつくられた上顎前歯部軟組織の再建の3つの流れ(トラック)が、骨造成とインプラント埋入のステップも含めて図示されている。すべての症例はこのトラックに沿って治療されており、本書の豊富な症例を追っていくとき著者がどの段階で、どのように考えているかを考えながら写真を見ると、いっそう理解が深まるであろう。
最終章である28章では、併発症マネジメントについて、主として治癒に関して解説されている。症例ごとに対応法と、その教訓が示されている。併発症を経験しない術者はいないため、非常に参考になる。また術中のフラップ穿孔、裂開などの併発症とその対応は、他の章の症例内で写真とともに示されている。探しながら読むのもおもしろいかもしれない。
GBRの世界的な第一人者である著者がその責を担っていこうとする強い意思が伝わる大著
日常の臨床において遭遇するさまざまな欠損の形態、大きさ、軟組織のコンディション、部位、患者のコンプライアンスなどによって、処置の難易度は大きく異なる。骨造成の技術はGBRだけではなく、ブロック骨の移植、Khoulyテクニック、サンドウィッチグラフト、骨延長など、欠損の条件に応じて術式を選択し治療結果を向上させるべきであるという考えがある。一方、汎用性の高いGBRの技術を洗練し、その適応症を拡大していく努力も必要であろう。本書は、GBRという技術の世界的な第一人者である著者がその責を担っていこうとする強い意思が伝わる大著であり、外科の各ステップにおけるわかりやすい臨床写真と的確な説明によって、読者も手術を体験することができる実践の書でもある。日本語版が出版されることによって、この貴重な情報がより多くの歯科医師に広がると確信している。訳者の先生方に感謝したい。
以前著者にお会いした際には、すでに3冊目を執筆中とおっしゃっていた。そちらも楽しみである。
