2015年10月12日掲載
さまざまな概念による総義歯印象採得法を示し、盛況に
五反田会第1回総義歯印象セミナー開催
1)「『患者満足度の高い総義歯』へのアプローチ」(山崎史晃氏、富山県開業)
スタディグループJDA(阿部二郎代表、東京都開業)にてBPS(Biofunctional Prosthetic System、Ivoclar Vivadent)をベースにした吸着義歯のテクニックについて学ぶかたわら、近年ではVASデンチャーシステム(VITA Amann-Girbach Suction Denture System)を提唱している山崎氏。講演では、下顎総義歯吸着のための条件やろう堤つき咬合床のエラーを減らすための方法、また新義歯試適時の状況に応じた対処法などについて述べた。
2)「自然科学的見地を考慮した総義歯印象(諏訪式総義歯印象法)」(藤田 徹氏、静岡県開業)
諏訪兼治氏(大阪府開業)が提唱する、クリアトレーを用いた選択加圧印象について学んできた藤田氏。講演では、義歯粘膜面と口腔内の粘膜表面の間に生じる表面張力をいかに利用するかといった話題に加え、上記のクリアトレーを用いた印象採得のステップなどについて述べた。
3)「治療用義歯の必要性」(市川 淳氏、東京都開業)
東京歯科大学大学院にて解剖学を専攻した後、銀座深水歯科(深水皓三院長、東京都)に勤務してきた経歴をもつ市川氏。講演では、深水氏らが提唱している治療用義歯(パイロットデンチャーシステム)を用いた総義歯治療のステップはもちろん、総義歯の製作のために知っておきたい解剖学の知識についても多数披露した。
4)「Carl O. Boucherに学ぶ総義歯補綴」(遠藤義樹氏、岩手県開業)
岩手医科大学歯学部歯科補綴学第一講座に20年弱勤務し、総義歯に関する研究・教育に携わった後岩手県盛岡市内に2005年に開業した遠藤氏。講演では、標題どおりBoucherの考え方をベースにした総義歯製作の流れに加え、総義歯の成功には適切な下顎位の設定が重要となることを強調。その上で、個人トレーの製作から辺縁形成までの印象採得のステップについて詳説した。
5)「BPSエステティックデンチャーの未来」(相澤氏、東京都開業)
日本大学歯学部を卒業し、同学大学院にて祇園白信仁氏(日大歯学部歯科補綴学1講座教授)に師事して総義歯を学んだ後、2004年に東京都江東区に開業した相澤氏。講演では、大学での経験が長かったゆえにBPSに対して懐疑的だったという氏が、上記の岩城氏との出合いによってBPSを使用するようになった経緯にはじまり、BPSの臨床ステップを氏ならではの視点で解説。また、登録商標した「BPSエステティックデンチャー」の名称のもと、今後は「70点の義歯」が製作できればよいというコンセプトをもつBPSの質をさらに向上させたいとした。
それぞれが、著名な歯科医師や大学にて学んできた演者たち。患者が満足する総義歯製作という同じ目標に向かいながら、そこにはさまざまなアプローチがあることを再確認できる1日であった。