社会|2025年10月29日掲載
「口腔細菌と全身疾患の関係」をテーマに
(一社)日本私立歯科大学協会、第16回歯科プレスセミナーを開催
さる10月28日(火)、第16回歯科プレスセミナー(一般社団法人日本私立歯科大学協会主催、羽村 章会長)が「口腔細菌と全身疾患の関係」をテーマに、アルカディア市ヶ谷(東京都)の現地およびWeb配信にて開催された。
本セミナーは、マスメディアを対象に今後の歯科が担う役割の大きさや魅力について講演を行い、国民に情報を広く伝えることを目的として2010年より開催されている。第16回目を迎えた今回は、沼部幸博氏(日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座主任教授)が講師として招聘された。
開会にあたり、羽村会長(日本歯科大学生命歯学部特任教授)が挨拶を行い、続いて櫻井 孝副会長(神奈川歯科大学学長)が多数の資料を提示しながら、口腔内の健康が全身の健康に関係していることが国民に周知されてきたこともあり、歯科医師へのニーズが高まっている一方、歯科医師数の減少や高齢化にともなう将来的な歯科医師不足、また歯科医院の地域偏在問題など、歯科医師を取り巻く現状について報告した。
引き続き、沼部氏による基調講演「口腔細菌と全身疾患の関係から考える歯科医療の未来 歯周病と全身疾患との関連の展望」が行われた。氏は、歯周病と全身疾患の関係を研究する学問領域としてペリオドンタルメディシン(歯周医学)を紹介し、口腔内細菌叢の変化や歯周病原細菌、さらには歯周病の炎症部位で産生される物質が全身に及ぼす影響について解説した。日本人の死亡原因上位10疾患のうち6つ(がん、心疾患、脳血管障害、誤嚥性肺炎、腎不全、アルツハイマー型認知症)が歯周病と関連しており、今後の研究によりさらに関連疾患が増える可能性があると述べた。また、口腔細菌叢と腸内細菌叢の密接な関係にも言及し、両者のバランス改善が健康長寿の鍵となることを指摘した。
その後、宇田川信之専務理事(松本歯科大学学長)をコーディネーターに、羽村氏、花形哲夫氏(山梨県開業)、塚崎雅之氏(昭和医科大学歯学部口腔生化学講座教授)の3名がパネリストとして参加し、「歯科医師・医療者が語る『口腔から考える全身の健康』」と題したパネルディスカッションが行われた。第1部「口の健康と全身疾患との関連〜研究現場の現状」、第2部「口の健康管理で全身の健康を支える〜歯科医療現場の現状」、第3部「歯科医師の役割拡大と専門領域における歯科医師不足」という3部構成で、教育者、開業医、基礎研究者それぞれの立場から現状報告と意見交換がなされた。
最後に、パネリスト3名に沼部氏を加えた4名による質疑応答が行われ、本セミナーは「歯科医師は、患者が生まれる前から高齢期に至るまで、一生を通じて命を守ることができる職業である」という言葉で締めくくられた。